お正月や七草節句、成人式など色々なお祝い事や行事があった1月。明けたばかりの2022年もバタバタと過ぎて行きますね!
奄美では一足早く桜の花が咲く頃ですが、他の地域ではまだまだ寒い日が続いていることと思います。
こんな寒い日には、年末に紹介した奄美風おでん「豚骨野菜(ウヮンフネヤセ)」を私は食べて温まりたくなります。
先日の大晦日は朝から豚肉を仕込み、夜には家族みんなで豚骨野菜を食べました。私の住んでいる福岡には、付け合わせの野菜となる石蕗(つわぶき)やシマアザミは売っていないので、ジャガイモと大根だけを付け合わせにしたのですが、それでも福岡にいながらも年末の奄美気分が味わえました。
今回は奄美の一部地域で「豚骨野菜」の付け合わせや佃煮として食べられている「シマアザミ」について紹介します。
シマアザミとは?
シマアザミは方言で「アザンギ」などと呼ばれ(他にも地域によって様々な呼び方があります)、一般的によく見られる紫色の花をつけるアザミと同様にキク科の多年草ですが、シマアザミは春になると白い花を咲かせます。鋭い棘をまとった大きなツヤツヤとした葉は、大きなもので50〜60cmほどあり、一株が1mほどと大きく、とても迫力のある植物です。見るからに触れると痛そうで、素手で触ることができません。
このシマアザミを食べる地域は奄美の中でもごく一部と限られており、北部に位置する龍郷町の一部と笠利の一部だと言われています。私の地元集落でもシマアザミを食べる習慣がないので、実は私も食べたことありません。
海辺の近くに自生しているシマアザミを見たことはありますが、どのように食べてどんな味がするのか?は、今回の記事を書くまで知りませんでした。
私も知らないシマアザミの食べ方
シマアザミを食べるにはまず棘を取るところから始まります。厚手の手袋をして棘のついてる葉を削ぎ落とし、真ん中の太い葉脈の部分を食べます。葉を削ぎ落とした後は大きな鍋で湯がき、粗熱が取れたら塩揉みをして塩漬けや冷凍にして長期保存できるようにしてから料理に使用します。
一枚一枚丁寧に棘を取るとても手間がかかる作業があるため、元来シマアザミを食べる地域であっても最近ではあまり食べられなくなったそうです。
大晦日に食べる豚骨野菜など煮込み料理に入れて食べられることが多く、味がよく染み込んで美味しいとのこと!
シマアザミを食べる地域の家庭では、自分達で食べる分のシマアザミを庭先で育てている人も多くいらっしゃるそうです。
奄美のお土産店や直売所ではたまにシマアザミの佃煮が売られています。食べる地域が少ないのでなかなかお目にかかれない代物ですが、次回の帰省時に見つけたら必ずゲットして食べてみたいなと思っています。
マコモダケ同様にシマアザミも知られざるスーパーフード!?
最近は食べられることが少なくなってきたシマアザミですが、近年このシマアザミに豊富な栄養素が含まれていることが分かり、シマアザミが新しい特産品になるのではと注目を浴びています。
ブロッコリーやレタスの約6〜7倍もあるポリフェノールに、普段の食事だけでは不足しがちなマグネシウムやカルシウムも豊富に含まれています。他にもシマアザミの油分には、血液をサラサラにしたりアレルギーを抑える作用のあるαリノレン酸も豊富に含まれており、肥満防止やアンチエイジングなどの効果が期待できるそうです。
この豊富な栄養素を活かし、シマアザミを粉末にしたものを健康食品として加工した商品もあります。
このシマアザミの粉末を食事と一緒に摂取すると、肝臓への脂肪の蓄積を抑制する働きで脂肪肝の予防が期待できるそうです。年末年始やお祝い事が続いて暴飲暴食しがちな時期にはシマアザミが救世主になりそうですよね。
現在このシマアザミの生産に力を入れているのが、奄美群島の中でも特に「長寿の島」と言われている徳之島です。シマアザミは海岸に自生しているため台風や塩害にも強く、害虫による被害がほとんど無いため無農薬で栽培できます。また、多年草のため多く収穫できるのです。主に徳之島でシマアザミの生産から加工までが行われており、島をあげてシマアザミを特産品にしようと盛り上げています。
これまでに紹介したマコモやサネン・カシャに続き、昔から何気なく食べられていたシマアザミが調べてみるといろんな可能性を秘めたスーパーフードだったとは!奄美にはまだまだこのようなモノがたくさんあるかもしれないですね!
今まで奄美の一部の地域でしか食べられていなかったシマアザミ。元来の食べ方である煮物や佃煮だけじゃなく、豊富な栄養素を活かした加工品でこれからますます注目を浴びるかもしれません。
文:佑美 イラスト:Yu Ikari
コメント