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TRIP

こだわりのblue。一点一点の手作りで計算された美しさ。【in blue 暁】

モダンな有田焼のギャラリー兼工房

有田焼を特集しようと決めたとき、とにかく行ってみようと下調べをせずに出向いた初めて有田。どこに行けばいいのかわからず、幾人かに教えてもらったオススメを頼りになんとなくの旅行計画を立てて出向いた。

初めて有田の駅の改札から出た時、想像しているよりもはるかに人が少なかったことに衝撃だった。コロナの影響もあっただろうけど、それにしても寂しく、正直言って賑わいのかけらもなかった。

乗り合わせたタクシーの運転手さんに話を伺うと、「陶器市のシーズンは大勢の人で賑わうが、それ以外はどちらかというと静かだ」と言っていた。コロナ前は国内外の観光客で賑わっていた京都が、コロナの影響で閑散としている寂しさとはまたちょっと違う感じではあったが、ゆっくり見て回りたいこちらとしてはちょうど良かった。

有田で出会った一人の作家

有田の中心街から少し離れた山あいの丘、県道から少しだけ私道にそれ少し坂を登ると、広い空間に漆喰で作られたモダンな平家が目に飛び込んでくる。そして建物の大きな窓辺にリズム良く作品が並ぶ様子が目に飛び込んでくる。

大きく開かれた鉄門の奥にある木製の扉を開けると、白を基調とした大きな空間に、雪のように白くて美しい作品が心地よく並べられている。一見、無機質そうな空間だが、大きな窓から陽の光が明るく注ぎこみ、心地よい木目の天井、そして窓の外にある自然が借景となり四季折々のコントラストを奏でてどこか温かみを感じられる空間。さらに、作品に使われている白い釉薬が、さらに温かみを添えて、モダンに感じられた。

ここは、器シリーズを連載してくれているMichikoさんが紹介してくれたおすすめの一つ。先祖代々が作品作りをする格式高い伝統的な窯ではなく、作家の百田暁生氏が営む2015年4月にできた比較的新しいギャラリー兼工房の『in blue 暁(あかつき)』だ。

初めて伺った時はギャラリー兼工房だとは思いもせず、有田焼の新しいセレクトショップだと思っていた。お店に入り出迎えていただいた作家の百田暁生氏とお話をさせていただいて百田暁生氏のギャラリー兼工房だと理解するほど、詳しく知らずに出向いたことを恥ずかしく思った。

ご挨拶した時に、「百田」と名字を伺いピンときたことがひとつあった。

それは「TY Palace Plate」という器を販売する株式会社百田陶園(以下、百田陶園)という名前だ。「TY Palace Plate」とは、パレスホテル東京が建て替えられ、リニューアルオープン時、「1616/arita japan」によってパレスホテル東京のために作られた器のことで、花の形とマットな質感が特徴的な有田焼だ。

パレスホテル東京内に百田陶園というショップがあり、その百田陶園と名字が同じだったことに加え、有田焼という共通点から、両者の関係を思い切って伺ってみた。すると百田暁生氏と株式会社百田陶園の社長 百田憲由氏は兄弟だったのだ。

「1616/arita japan」によってパレスホテル東京のために作られた「Palace Plate」

前述の「1616/arita Japan プロジェクト」が有田焼にとって大きな転換点になったことを、「TY Palace Plate」を購入する時に調べて知った。そのプロジェクトに至った理由は「和食器が売れない時代がやってきた」と窮地の状況を打破し、「もう一度、世界中の家庭の食卓で有田焼が使われる世界をつくりたい!」と立ち上げられたのだ。

和食器が売れない時代に手に取ってもらえる器

この記事を読んでくれている読者にも当てはまるご家庭があると思うのだが、和食器が食器棚にびっしり揃っているご家庭は少ないのではないだろうか?

かく言う我が家もそうだ。

私たちの家に、伝統的な和食器がなくても困ることはない。さらにおしゃれで安価な洋食器に目移りしてしまう。ましてや、普段使いの食器にわざわざ高い食器を使う必要性も感じてこなかったがために、わざわざブランドの和食器を買いに行こうとはしてこなかった。

しかし、伝統工芸品と呼ばれる有田焼を作り続けている人たちにとっては大問題であり、どうにか伝統を守ろうと必死だったのだ。その一つの答えが「1616/arita Japan プロジェクト」だったのだ。

私も「シンプルでおしゃれで使いやすそう」と手に取り、購入し、日常使いしている。そう、私に取って「1616/arita Japan プロジェクト」の食器は、とってもおしゃれだったのだ。そして、今ではシリーズ違いも揃え、来客時にお皿を使ってもてなすので、来客者から「どこの器?』「どこで買えるの?」と質問をよく受ける。そうして私の周りで「1616/arita Japan プロジェクト」の器を購入した友人が何人もいる。友人たちは一様に、「おしゃれ」「素敵」と言って買っている。使い勝手も良くて多くの人が満足している。

今の私たちがお皿を購入する時に重要視しているのは、「おしゃれ」「素敵」か「お手頃」なのだ。私だけなのかもしれないが、その両方が備わっていると嬉しくなってついついシリーズを揃えたくなる。そうして、「一人でも多くの人が手に取ってくれなければ、購入してくれる人が居なければこの先、有田焼は続かない」。これが「1616/arita Japan プロジェクト」の本質なのではないだろうか。

その意味で、百田暁生氏が作る作品にも「シンプルでおしゃれで使いやすそう」と魅力を感じた。だから、両者の関係が兄弟関係だと聞いて驚きを隠せなかった。血は繋がっていると。

そもそも有田焼って何?がきっかけ。

さて、有田焼はどんなイメージだろう?

私のイメージは、赤や青の呉須と言われる絵の具で絵付けされた器だった。想像してもらうのにわかりやすい器をご紹介すると、大手牛丼チェーン 吉野家で使われている器だ。さまざまな種類の絵柄があるのでだが、私は正直、あの絵柄や色味が苦手だ。なぜなら、『ナスのおひたし』や『ほうれん草の胡麻和え』などの料理に合わせるのはそう難しくないと思うが、普段、食卓に洋食が並ぶことが多い我が家ではちょっと使いづらい。だから、手に取る機会があまりなかった。とはいえ、有田焼の全てがそうではない。先に述べたように百田暁生氏の器も、「1616/arita Japan プロジェクト」の器も立派な有田焼なのだ。

これまで器を買う時に、「有田焼だから買おう!」となったことは正直、一度もない。むしろ、買い揃えてきた器が実は有田焼だったというのがほぼ全てだ。無論、有田焼じゃない器もある。今回有田に出向く時、深く調べなかったのには理由がある。それは、「有田焼って一体なんだろう?」とわからなくなってしまい、その答えを探るべく有田に行ってみようと思ったのが、とにかく行ってみようと思ったきっかけだった。

白磁のキャンバスに凛と形どる淡い釉薬の器に一目惚れし、恋する

これまで買ってきた器のほとんどが私の場合、一目惚れだった。今回の旅で出会った百田氏の作る器も同様に、一目惚れだった。というか一目惚れより、恋に落ちた器だった。

流線的でとても美しい形をした真っ白の白磁をキャンパスに、釉薬で描かれた作品は、あのジャクソン・ポロックの絵画のようだったことが一目惚れした理由だ。その器をみた時、思いついたのが以前ご紹介したBaruComodoのおせちの撮影で使いたいと、器を見てその器に盛りたいものが見えた瞬間でもあった。

一目惚れしたのだが、実はその時に購入はしなかった。それは残念ながら、手作りゆえに形とその描かれた柄が、欲しいと思う一つに絞れなかったからだ。手作りの良さは、製作時における偶然の重なりで、同じものがまたとない事だ。

しかし、百田氏がそれを聞いて、そのイメージに近いものを後日焼き上げてくださり、二回目におとづれた時に購入した。それが写真の作品。

実はこの器、冒頭に載せた写真の通りもともとは花器として作られたものだったが、料理を乗せるととてもカッコ良くなるのではと思い、今回の撮影に使用させていただいた。

料理を盛り付けた写真は好評で、関係者をはじめBaruComodoのおせちの注文にもつながった。

購入時のエピソードだが実は裏話がある。いくつか見せていただいたお皿で一つに絞ったのだが、今回撮影で使った器とは別の柄を当初は購入したのだ。その時買わなかったもう一つの器に、後ろ髪を惹かれる思いをしたのだ。

結局、東京に戻ってから連絡させていただき、もう一つの器を購入することができたのだ。それが撮影で使った器だ。

1点ものの器を購入するときによくある話だが、これも器探しの醍醐味だと改めて思った。さらに言うと、初めて訪ねた時から気になっていたこの後に紹介するコップ。それも後の訪問で購入させていただいた。その時も、数が揃わずバックオーダーの形で後日送られてきた。

今年の正月、新しい一年の始まりを数多くの百田氏の作品で溢れかえり、子供たちも「かわいい」と喜ぶ姿が見れ、幸せな一年の始まりになった。

伝統と歴史を生かした新しい器。その特徴は、釉薬の使い方

百田氏の作品で好きなところは、真っ白の白磁を、まるで白いキャンバスのように釉薬で装飾されている点だ。

先にも書いたようにジャクソン・ポロックの絵画のような絵が描かれていたり、まるで時を止めたかのうように雫が滴る様子を表現して描かれた釉薬を焼き固めた作品など、これまで想像していた有田焼の概念を覆してくれる作品が私は好きだ。また上の写真の2枚目のコップのように、外周を色とりどりの釉薬が一直線で絵付されている。

釉薬とはガラス質の液体で、燃焼させることで硬化するから、絵付けをする時は液体なのだ。だから、想像してほしいのだけれども、側面につけた液体は通常だと重力に従って滴ってしてしまう。しかし、絵付けしている時に滴った釉薬が焼き固まったのではなく、この完成形を計算されて焼き上げられた一品だ。

真っ白の白磁を、まるで白いキャンバスのように釉薬で装飾された作品や、ジャクソン・ポロックの絵画のような絵が描かれた器、まるで時を止めたかのうように滴る釉薬を焼き固めた作品など、呉須で描かれた”いわゆる有田焼”と認識していた有田焼の概念を覆してくれる作品が私は好きだ。

百田氏の作品が気に入った私は、最近一つのお願いをした。

これまで百田氏が焼き上げた作品にはなかった形で、別の作家さんの作品と百田氏の作品を融合させた形に百田氏のデザインを施した器が欲しいとお願いしてみたところ、快く制作していただいた。その時、「依頼仕事も以前はやっていて、嬉しい」と話す百田氏。

器に出会い、恋したのがきっかけで、今では百田氏の数多くの器を日常使いしている。今年のお正月、我が家の食卓に並んだ器のほとんどが百田氏の作品だった。器探しの楽しみの一つに、気に入った器で食卓を囲むという楽しみもある。ましてや、晴れの日にさまざまな種類のお気に入りの器に囲まれると、嬉しくもあり、誇らしくもあった。

私も一人暮らし時代から愛用する無印良品やIKEAの器よりは少し高いが、何より毎日その器で食を囲める幸せがある。もちろん、欲しいと思っても買えない器も百田氏の作品にはある。その作品は、心ときめく出会いがあり、買うことできるタイミングが来た時に手にしたいと思っている。

一度に買い集められるならばそれはそれで楽しいかもしれないが、徐々に買い集めていく気長な心で旅をすると、思いもよらない器との出会いがあり、年月はかかるがその分楽しみも長く続く。

結局、有田焼って何?

こんなことを言ってしまうと怒られてしまうかもしれないが、「有田焼」には、もちろん有田焼ならではの良さや特徴があるのだが、「有田焼」というブランドではもうない気がする。人で言う「出身地」やはたまた「方言」のようなものであって、窯元や製作者が「ブランド」なんだろう。

あくまでも個人的感想だが、有田焼の本質に迫ろうとしても、有田焼の本質はまだ見えてきていない。現地に足を運び、聞いたりみたりしてみても、ちょっとやそっとでは理解に辿り着けない。だから、私は取材を進めていくにつれ、有田焼とは何かを考えるのをやめた。

取材を進めて分かったことは、有田で器に関わるすべての人々は「有田焼」にプライドと伝統を持っているということ。皆が有田焼に対して真摯に向き合っているからこそ、有田焼とは何かを考えずに、ぜひ好きな器と出会って恋してほしいと思った。

たくさんの人が関わってできる有田焼もあれば、最初から最後まで一人で作り上げる百田氏のような有田焼もある。赤や青の絵柄が書かれた器もあれば、百田氏のようにシンプルな器もある。たくさんの窯元や作家が有田には居て、有田の地で器づくりを行なっている。そして、器を取り扱うお店がたくさんある。

お店や窯元、さらには有田ポーセリングパークなどのテーマパークで器作りを体験することもできるし、絵付け体験もできる。そして、作家さんにも、職人さんにも会うことができる。作家さんも、職人さんも、お店の人もみんな器のプロだ。

そんな人、お店、そしてさまざまな種類の有田焼が一堂に介している有田での器探しは、デパートやセレクトショップ、家具屋さんで器探しをするのと大きく異なって楽しい。高級なものから安価なものまで、シンプルなものからこだわりのデザインもの、まるで町そのものがデパートのようだ。

これが、有田が”焼き物の町”と言われる真意であると、そのことだけは現地に行ってみて分かったことだ。

器と出会うのは楽しい

それは私が器を探しているからだと思っていたけれども、そうではなかった。

取材に同行したスタッフは、特に器探しをしているわけではなかった。しかし、現地で何かしらの器を手に帰路に着いた。みんな一目惚れした器に出会えたのだ。

器を探している人も、そうでない人も、「これは」と思える器に出会えると、欲しくなる。器にはそんな魅力がある気がする。

だからこそ、器の町 有田に一度足を運んでみてはどうだろうか?

文:Daisuke Kinoshita(PLTRA inc.) 写真:Makoto Shikuya(Fede)/Daisuke Kinoshita(PLTRA inc.)

Information <in blue 暁>

〒844-0022 佐賀県西松浦郡有田町黒牟田丙3499-6
TEL/FAX:0955-42-3987
*営業時間 10:00〜17:00
*不定休
HP    http://inblue-akatsuki.com

<近日開催予定の個展>

器と茶のイノベーション 百田暁生・松田二郎
会場:博多阪急
〒812-0012 福岡市博多区博多駅中央街1番1号
TEL:092-461-1381
会期:2月16日(水)~2月22日(火)
営業時間:午前10時から午後8時
※新型コロナウイルスによる感染拡大状況により開催可否及び営業時間が異なります。お出かけ前に博多阪急HP(https://www.hankyu-dept.co.jp/hakata/)をご確認ください。
【お客様へのお願いについて】
◆ ご来店の際には、マスクの着用をお願いします。
◆ ご来店の際には、入口に設置しております、消毒液にて手指の消毒をお願いします。
◆ 体調のすぐれない方は、ご来店をお控えください。
◆ できる限り混雑する時間帯(開店直後と閉店前)を避けてご来店ください。
◆ できる限り少人数でご来店ください。
◆ エスカレーターやエレベーターをご利用の際は、適切な距離を保っていただくようお願いします。

作家:百田 暁生
陶歴

1971年  佐賀県有田町にて生まれる
1991年  副島四郎先生に師事
1994年  奥川俊右衛門先生に師事
1995年  独立
2015年  新工房・ギャラリー設立 in blue 暁
主な入賞・入選歴
日本伝統工芸展
智美術館 「茶の湯の現代 -用と形-」展
日本陶芸展
現代茶陶展
田部美術館「茶の湯の造形展」九州山口陶磁展

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