地元の食事と文化。奄美・有田を紹介|ブラトラ

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ご先祖さまをもてなす三日間

本格的に暑い夏が始まりましたね!8月は奄美はお盆のシーズンです。奄美のお盆は旧暦で行います。(最近は新暦で行う地域もあります。)

旧暦の7月13日〜15日(今年は新暦の8月10日〜12日)がお盆の時期になるのですが、今年は新暦の月遅れのお盆と旧暦のお盆の時期がほぼ同じ時期になります。奄美のお盆は迎え盆に始まり、送り盆で終わります。ご先祖さまをおもてなしする三日間を紹介したいと思います。

迎え盆

お盆の初日を「迎え盆」と言い、奄美のお盆はご先祖様をお墓へ迎えに行くことから始まります。昔から「迎え盆ははやばやと、送り盆はゆっくり」と言われており、迎え盆はいつも午前中に行っています。

迎え盆の朝はいつも母がお墓の清掃をしてお墓参りをし、ご先祖さまが迷わないよう日中でも提灯に火を灯し家まで持って帰ります。この灯りがご先祖さまの道標になるのですが、寄り道をするとご先祖さまが迷子になってしまうので真っ直ぐ家に帰るようにと言われています。

母がご先祖さまをお迎えに行っている間、家で父と一緒に位牌棚(イフェダナ)や迎え棚(ムケダナ)と呼ばれる祭壇の準備をします。最近は子供達が父の手伝いをするのですが、提灯やキラキラと回る灯籠を触ったりする機会はこの時ぐらいなのでいつも楽しそうに準備しています。孫たちと一緒に祭壇の準備をしている父の後ろ姿はとても嬉しそうに見えます。

母がご先祖さまを迎えて帰ってきたら祭壇の灯籠に明かりを灯し、精進料理やお菓子などをお供えします。祭壇へお供えするときは方言で「ショウロウ」と呼ばれる植物(和名ではメドハギ)の茎で箸を作り、十字に立ててお供えします。これを「ショウロウバシ(精霊箸)」と言い、この十字が魔除けになるとも言われているそうです。

中日(なかび)

お盆の2日目はその年に初盆を迎える家などに挨拶もかねて、親戚や友人の家の迎え棚を拝みに回ります。

お盆に入るとお墓のご先祖様もいなくなってしまうので留守の間お墓が大丈夫かどうか見回りに行くため、昔は中日にもお墓参りをしていたのだそう。今はほとんど無くなってしまった習慣ですが、今でもこの日にお墓参りに行く人もいるそうです。

お盆の三日間は野菜の煮物や油ぞうめんなどの精進料理を食べ、同じようにご先祖様にお供えします。最近は簡素化する人も多いですが、母は朝昼晩の三食の食事に加え間食に奄美の発酵ドリンク「ミキ」やぜんざいなどもしっかり三日間お供えしています。私は母と同じようにしっかりと出来ないなぁ、いつもすごいなぁ…と思いながら眺めています。

送り盆

ご先祖さまをお墓まで送っていくことで奄美のお盆は終わります。送り盆の日に我が家は必ず白玉団子を作るのですがシマ(集落)や家庭によって違いもあり、餅をつく人もいるのだそう。白玉団子はいつも子供達が張り切って作ってくれます。母と一緒に楽しそうに作る姿を見て、ご先祖様たちも微笑ましく見ているのではないかなぁと思います。

作った白玉はその日のおやつとしてぜんざいや砂糖醤油に絡めて食べ、ご先祖様にもお供えします。

そしてこの日あの世へと帰るご先祖様が、帰る途中でお腹が空かないようにお弁当も作ります。このお弁当に白玉と迎え棚にお供えしてある落雁やご飯も一緒に詰め、最後に「クワリ」と呼ばれる里芋の茎をスライスして入れます。このクワリがあの世で通貨の代わりになると言われているそうです。

送り盆は空が暗くなる前、涼しくなってくる時間帯(夕方4〜5時頃)から家族全員でお墓に見送りに行きます。家から提灯に火を灯し、提灯を片手に家族みんなでお墓まで歩いて行きます。子供達も小さい提灯を手に持ち、夕暮れ時に提灯を片手に家族みんなで川沿いの土手を歩いていく光景は子供の頃から今も変わらない光景でとても懐かしい気持ちになります。夕方の風が心地よく、ご先祖様もこの賑やかな輪の中にいるんだろうなぁと感じるひと時です。

お墓へ着くと掃除をしてお墓の周りを綺麗にし、墓前にお土産のお弁当を広げてお供えします。お墓参りの所作も独特でシマ(集落)によって少し違いがあるのですが、私の地元では水を入れたコップに葉を一枚浮かべ、その葉で水を2回チョンチョンと払ってから手を合わせます。家族全員がご先祖様へのお参りを終えると一つだけ提灯に火を灯してお墓の横に吊るし、次は親戚や友人のお墓へお参りをします。奄美のお墓には送り盆の時に提灯を吊るせるように、提灯を吊るす棒が備えられています。

毎年この送り盆の時に、親戚や知り合いと久しぶりに顔を合わせることが多く「あら〜帰ってきてたの?子供たちも大きくなったねぇ〜!」と話に花を咲かせたり楽しい時間を過ごします。この時はお墓が賑わい、明るく温かい雰囲気に包まれます。

相手を想う言葉〜とうとがなし〜

賑やかな送り盆が終わり家へ帰ると「精進落とし」といい、お肉や魚を使った夕飯をみんなで食べます。たった2日半ほどの野菜だけの食事なのに、この時に食べる肉や魚は特に美味しく感じます。普段当たり前に食べている料理も、とてもありがたい気持ちになります。そんな日常のありがたさを感じるのも奄美のお盆です。

奄美には「とうとがなし」という方言があり、漢字では「尊々加那志」と書きます。ご先祖さまや神様などにお祈りするときや、「ありがとうございます」というニュアンスで使われる言葉です。尊々は相手を敬い尊ぶ心、加那志(かなし)は古語で愛し(かなし)と表記し、愛おしいという意味です。この「とうとがなし」という言葉には「あなたをとても愛おしく大切に想っています」という意味が込められた言葉です。お盆の時には、迎え棚にお供えをするたびに「とうとがなし」と手を合わせ、ご先祖さまへ想いを馳せます。

目に見えないご先祖様を大切に想い、おもてなしをする三日間。なるべく早くお墓へお迎えに行って、ご先祖様がお腹を空かせないようにと手土産のお弁当を持たせ、みんなでゆっくりとお見送りをする。奄美のお盆はまるで生きている人をもてなすような習慣です。今私たちがここに居るのは遥か昔から命を繋いでくれたご先祖様がいたから。当たり前と思いがちだけれど当たり前ではない、とても大切なことを普段から想っているからこそ現在まで継承されている文化だと思います。ご先祖さまや仏様に向かい「とうとがなし」と手を合わせてきた奄美の人々。この「とうとがなし」という言葉に、島人の心が全て詰まっているような気がします。

「とうとがなし(ご先祖様、あなたをとても大切に想っています。いつもありがとうございます。)」これから子供たちにも伝えていきたい大切な想いであり、言葉です。お盆の時だけではなく、日常の中でも時々思い出したい大切な想いですよね。

「とうとがなし」大切な人を想う時や、目に見えない何かに祈る時などぜひ唱えてみてください。フッと心が温かくなる言葉です。

いつも読んでくださってありがとうございます。

「とうとがなし」

文:佑美 イラスト:Yu Ikari

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