ワインの醍醐味は “香り”にあり!と言っても過言ではありません。
そもそも “香り”は 味わいを形作る上で、超重要な要素。鼻をつまんで食べ物を口にいれると、「甘い」や「酸っぱい」などの味はわかれど、とても物足りなく感じます。味覚だけだけでは「美味しい」という感覚は得られません。 “香り”がなくっちゃダメなのです。
ワインはまさに “香り”を楽しむためのもの。ワインを料理に合わせることは、食卓に “香り”をプラスすることとイコールです。ワインがあれば「美味しい」の振れ幅をぐんと広げることができます。
ワインの香りには小難しい印象がつきまといます。私も昔は「赤ワインと白ワインの違いくらいはわかるけど、それ以上の細かい香りの違いなんて、わかりっこない」と思いこんでいました。しかし、基本をおさえれば案外理解できるものです。
ワインの香りに関するよくある疑問は次の三つ。
- ワインの原料はただひとつブドウだけなのに、なぜワインによって香りに違いがあるの?
- 「◯◯の香りがする」と言われても自分ではなかなか実感できないのはなぜ?
- ワインの香りは色々なものに例えられるけれど、例えが独特すぎてイマイチピンとこないのはなぜ?
完璧にマスターしなくてもこの3つの疑問が解決すれば、ワインの香りを今よりずっと楽しめるようになるはずです。順番に見ていきましょう。
疑問1:ワインによって香りに違いがあるのはなぜ?
グラスに注がれたワインからは、実に数百種類もの匂い物質が漂い出ています。一説によると、赤ワインと白ワインあわせて850種類もあるそうです。たくさんある匂い物質のうち数種類が組み合わさると、私たちが認識できる何らかの香りになります。
例えば、「エチルヘキサノエイト」という匂い物質は単体だと日本酒のような香り、「フラネオール」という匂い物質は単体だと綿菓子のような香りがしますが、このふたつが組み合わさるとパイナップルの香りになるんです。言い換えると、パイナップルの香りは「エチルヘキサノエイト」と「フラネオール」でできているということ。香りには必ず匂い物質を材料としたレシピがあって、材料がそろえばその香りを再現することができるというわけです。
ワインの香りは匂い物質の組み合わせの数だけ生まれるわけですが、原料ブドウの品種や醸造方法によって、含まれる匂い物質の種類や数に差がうまれます。発行に木樽を使うと木樽に由来する匂い物質がワインに溶け込むけれど、ステンレスタンクを使うと純粋なブドウ由来の匂い物質だけになる、というように。これが、ワインによって香りに違いが生じるからくりです。
「数百種類の匂い物質があるのなら、生じる香りは膨大な数になるんじゃ…?」と不安に思われるかもしれませんが、大丈夫です。人間が嗅ぎ分けられる香りには限界がありますし、プロのソムリエでもすべての香りを記憶しているわけではありません。ブドウ品種や醸造方法ごとに特徴的な香りというものがあって、それをインプットしておけば十分なのです。覚えておくと便利な “最低限の香りの特徴”については後述します。
疑問2:自分で香りを認識できないのはなぜ?
結論を言ってしまうと、香りを嗅ぎ分けるのには訓練が必要です。香りを認識するには、ワインから漂い出ている数百の匂い物質の中から特定の物質を数種類ピックアップして関連づける必要があります。香りを細かく嗅ぎ分けるのはなかなか骨の折れる作業ですし、技術が必要なのです。
そこまでのモチベーションがわかない人は、「好きだな」と感じたワインの説明を読み「このワインは◯◯の香りがする」の部分をメモしておけばOKです。それができれば十分、ソムリエに自分の好みを伝えることができます。
香りを自分でちゃんと認識できるようになりたい!という人は、「このワインは◯◯の香りがする」と言われたときの「◯◯」に入るものの香りを嗅いでみて、香りのひきだしを少しずつ増やしていくのがオススメです。香りを嗅ぎ分ける第一歩は、香りを知ることだからです。
例えば「カシスの香り」にピンとこない人は、カシスオレンジなどのカクテルに使うカシスリキュールの香りを嗅いでみたり。例えば「丁子(ちょうじ、クローブ)の香り」がよくわからない人は、次に家でカレーを作るときに少し奮発して、スーパーのスパイスコーナーで香辛料のクローブを手にとり、カレーにいれるついでに香りを記憶してみたり。
香りのひきだしが増えたら、「このワインは◯◯の香りがする」の「◯◯」を意識して嗅いでみてください。わからないからと言って焦りは禁物、ゲーム感覚でトライしてみましょう。ワインは研究対象ではなく楽しむものですから!もし香りを嗅ぎ分けられるようになったら、ワインが楽しくって仕方なくなります。そしてきっと、色々なワインを味わったり、食卓に並べてみたりしたくなるはずです。
長くなったので、続きは後編で!
後編では、疑問3について解説しつつ、「ブドウ品種や醸造方法ごとの特徴的な香り(覚えておくと便利な “最低限の香りの特徴”)」をお伝えしていきます。
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