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コンテチーズの旅:ジュラ地方に息づく味と伝統

2019年、私はコンテチーズを単なる食べ物としてではなく、ジュラ地方の豊かな自然、人々の深い知恵、受け継がれる伝統、そして長い歴史の象徴として写真に収めることを試みました。このプロジェクトの作品は、エリオグラビュールという19世紀に生まれた古典的な技法を用いて制作し、東京、Roonee 247 Fine Artsで発表する機会を得ました。私は制作過程を振り返る中で、改めてコンテチーズとは何なのか、そしてそれを作り上げ、守り続けてきた人々の物語を皆さんに紹介したいと思います。

コンテチーズを題材にした作品はRoonee 247 Fine Arts でご覧いただけます

チーズの国、フランス

フランスは「チーズの国」として世界的に知られています。一人当たりの年間チーズ消費量は約26.2kgに達し、これは世界の中でもトップクラスの数字です。この数字はフランス人にとってチーズがいかに重要な位置を占めているかを物語っています。フランスの食卓における伝統的なスタイルは、前菜、メインディッシュ、チーズ、デザートの順序で構成され、家庭でも一般的に受け入れられています。特にチーズの役割は大きく、食卓にチーズがないと物足りなさを感じるほど生活に深く根付いています。

フランス国内には400種類以上のチーズがあると言われています。その中でも、特に「原産地呼称保護(AOP)」の認定を受けたチーズは、品質や伝統の面で特別な存在です。このAOP認定チーズの中で、コンテチーズはその約15%を占める重要な存在であり、その風味や品質がフランス国内外で高く評価されています。フランス人の食卓に頻繁に登場するほか、世界中のチーズ愛好家に愛されています。

コンテチーズは同じジュラで作られるワインが良く合う

ジュラ地方とコンテチーズ

コンテチーズは、フランス東部に位置するフランシュ=コンテ地方で生産されています。その中心地であるジュラ地方は、スイスとの国境に近い美しい自然環境に恵まれた地域です。この地方はアルプス山脈の一部を含み、四季を通じて変化に富む風景が広がります。特に夏の牧草地は牛たちに豊かな栄養を提供し、香り高いミルクを生み出します。その一方で、冬は厳しい寒さと深い雪に覆われるため、長期間保存可能な食料が必要でした。このような条件の中で生まれたのが、熟成に耐えるハードチーズであるコンテチーズです。

冬場は雪に覆われる厳しい気候 その自然が育むのがコンテチーズなのだ

コンテチーズの生産

コンテチーズは、その生産過程において厳格な規定が設けられています。まず、使用される牛乳はジュラ地方特有のモンベリアール種の牛から搾られたものに限られます。これらの牛は主に高地の牧草地で放牧され、人工飼料に頼らず自然の草や花を食べて育ちます。その結果、牛乳には草原の香りや独特の風味が凝縮されます。この新鮮な牛乳は「フリュイティエール(Fruitière)」と呼ばれる地域のチーズ工房に運ばれ、伝統的な手法で加工されます。 フリュイティエールでは、牛乳が加熱され、大きなホイール状のチーズに成形されます。その後、チーズは熟成庫(Cave d’affinage)に移され、最低6ヶ月間熟成されます。熟成士(Affineur)は、湿度や温度を細かく管理し、熟成の過程でチーズを定期的に裏返し、塩水で表面を拭くなどの作業を丁寧に行います。この熟成の工程を経て、コンテチーズは独特の風味と食感を持つようになります。

コンテチーズはこの地方のモンベリアール牛のミルクしか使えない

コンテチーズの味わい

熟成期間に応じて、コンテチーズは異なる味わいを楽しむことができます。6ヶ月熟成の若いコンテチーズはミルキーでクリーミーな風味が特徴で、初心者でも親しみやすい味わいです。一方、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月と熟成が進むにつれて、ナッツやカラメルのような複雑で深みのある風味が加わり、食感もよりしっかりとしてきます。特に36ヶ月以上熟成されたものは非常に希少で、特別な場で供されることが多い高級品です。 また、夏と冬で味わいが異なる点もコンテチーズの特徴です。夏の牧草地で育つ花を食べた牛のミルクから作られるチーズは、甘みと豊かな風味を持っています。一方、冬の干し草を食べた牛のミルクから作られるチーズは、落ち着いた風味が特徴です。季節ごとの違いを楽しむことができるのは、自然が育むチーズならではの魅力です。

フリュイティエールで出来たての赤ちゃんチーズは2週間ほどすると
熟成庫に移されコンテチーズへと育っていく

コンテチーズの味わい

熟成期間に応じて、コンテチーズは異なる味わいを楽しむことができます。6ヶ月熟成の若いコンテチーズはミルキーでクリーミーな風味が特徴で、初心者でも親しみやすい味わいです。一方、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月と熟成が進むにつれて、ナッツやカラメルのような複雑で深みのある風味が加わり、食感もよりしっかりとしてきます。特に36ヶ月以上熟成されたものは非常に希少で、特別な場で供されることが多い高級品です。 また、夏と冬で味わいが異なる点もコンテチーズの特徴です。夏の牧草地で育つ花を食べた牛のミルクから作られるチーズは、甘みと豊かな風味を持っています。一方、冬の干し草を食べた牛のミルクから作られるチーズは、落ち着いた風味が特徴です。季節ごとの違いを楽しむことができるのは、自然が育むチーズならではの魅力です。

常にチーズの状態を把握し、その熟成具合から出荷の時期を決めていく

エリオグラビュールでの表現

このプロジェクトでは、ジュラ地方の四季を通じて撮影した数千枚の写真の中から厳選した十数点をエリオグラビュールで作品化しました。この古典的な技法は、写真に深みと温かみを与えるだけでなく、コンテチーズの歴史や伝統を視覚的に表現するのに適していると感じました。

写真はフランス人間国宝ファニー・ブーシェによって作品へと高められていくのだ

今回の記事では、当時日の目を見なかった写真を掘り起こし、撮影時の思い出や現地での出会いを振り返りながら、皆さんをコンテチーズの旅へと誘いたいと思います。フランス・ジュラ地方の美しい風景とともに、コンテチーズを巡る物語をお楽しみください。

文・写真 櫻井朋成

フランス在住の写真家。フォトグラビュール作品を制作。現在はジュラ地方のガストロノミーを追い、コンテチーズやヴァンジョーヌ、ワインに関わる人々や伝統を記録中。 個展や展示情報はこちらから! 
https://tomonari-sakurai.com
グラビュー流作品についてはnoteでも執筆中
https://note.com/tomogravure

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