奄美の女の子(ウナグ)の節句「サンガツサンチ」

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奄美小噺 Vol.1 旧暦を大切にする奄美の文化

3月3日、今日は「ひな祭り・桃の節句」ですね。女の子の健やかな成長と健康を願う日です。家族で美味しいご馳走を食べながらお祝いをされる方も多いのではないでしょうか?私の地元である奄美大島にも「サンガツサンチ」という「桃の節句」を祝う日があるのですが、実は旧暦の3月3日に行われるため、本土の桃の節句とは少し時期が違います。

旧暦の3月3日(今年は4月14日)に行われ「サンガツサンチ」と呼び「フティモチ」というヨモギ餅を先祖にお供えし、女の子の将来を祝福します。

「フティ」とは方言でヨモギのことをいい、月桃の葉で包んだヨモギ餅をこの日はみんなで食べます。ヨモギの香りと月桃のハーブのような香りが相まって、爽やかな甘さのお餅でとても美味しいんですよ。

そして初節句の子を浜へ連れて行き海水に足をつけ、無病息災を願うという風習があります。近年ではこの日にあわせて「海開き」を行うところも多く、初節句の子を連れた家族や初泳ぎを楽しむ人たちで浜辺は賑わいます。

雨の多い奄美ですがこの時期は天候に恵まれることが多く、とても気持ちのいい気候です。

この日は大潮と重なるため、潮が引く時間帯には海が遠浅になり、色々な貝が水面に顔を出し潮干狩りも楽しめます。貝を採るのを楽しんだり、泳いだり、昔から奄美ではこの日はみんなで海へ出かけて磯遊びをしよう!という日でもあったのです。

特に奄美の南部の地域(瀬戸内町など)では、このサンガツサンチの行事がとても盛んで、この日は小学校が午後からお休みになり「サンガツサンチに海へ行かないとカラス(またはフクロウ)になる」という言い伝えまであるそうです。

小さな島の中でも地域によって言い伝えが違っていたり、文化に特色があるのが奄美ならではで面白いですよね。

今年のサンガツサンチは新暦の4月14日にあたります。春の潮風を感じながら、いつもと違う桃の節句を家族で祝ってみるのもいいかもしれません。

奄美では今でも旧暦を大切にしており、このサンガツサンチの他にも旧暦を元に様々な行事が行われるのですが、旧暦とはどんなものかご存知ですか?

旧暦とは

今私たちが使用している暦(こよみ)は「太陽暦(グレゴリオ暦)」と言い、太陽の動きを基準とした暦です。

旧暦とは簡単にいうと、月の満ち欠けを基準としながら季節とのズレがないよう太陽の動きも考慮に入れた暦です。日本では明治以前までこの旧暦を使用していました。

太陽暦は1年が365日あるのに対し、旧暦は1年が354日になります。太陽を基準とする1年より11日短くなってしまい、3年で約1ヶ月の誤差が生じてしまいます。この誤差が続いてしまうと実際の季節とだんだんずれてきてしまうので、約3年に1度「閏月(うるうづき)」というものを設けて、1年を13ヶ月にして調整していました。

そのため、今私たちが使用している新暦と旧暦では日にちにずれがあるのです。

旧暦と島のリズム

月の満ち欠けは潮の満ち引きや植物の生育などと密接に関係しており、農業・漁業に従事する人や自家栽培をする人が多い奄美では、この月のリズムを基準とした旧暦が島の風土や島人(しまんちゅ)の生活に合っており、今でも旧暦が大切にされています。

昭和30年ごろまで奄美では「お正月を旧暦で祝うか?新暦で祝うか?」という話をよくしていたそうで、島人の生活の中に新暦が定着しだしたのは昭和30年代ごろからと思われます。

島内では現在の暦のカレンダーに旧暦と月の満ち欠けや潮見表も盛り込まれているカレンダーが毎年販売されており、地元の人たちに人気があります。また、このようなカレンダーを自治体が発行し、住民に無料で配布している市町村もあるんです。

奄美大島で流れるゆったりとした「島時間」は、自然と共に生きるために根付いているこの旧暦のリズムからきているのかもしれないですね。

このシリーズでは奄美の人々が大切にしている行事や独自の風習などを紹介し、島人の日常生活をより身近に感じて楽しんでもらえたらと思います。

文:佑美 イラスト:Yu Ikari 

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