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島の心、奄美の島唄

皆さんは奄美の島唄を聴いたことがありますか?

「島唄」というとTHE BOOMの歌う「島唄よ風に乗り〜♪」というメロディを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、奄美の島唄はこれとは全然違います。琉球民謡で使われている

「琉球音階」ではなく、奄美の島唄は日本民謡と同じ「ヨナ抜き音階」なので、琉球民謡が「陽」だとすると奄美の島唄は「隠」といった雰囲気があります。

奄美の島唄を聴いたことがなくても約20年前に流行り話題になった、元ちとせさんの「ワダツミの木」や中孝介さんの「花」などで、奄美の島唄の独特な節回しを耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。島唄の歌唱法で歌われているこれらのJ POPは、哀愁が漂い人々の心に刺さります。

奄美の島唄の特徴

〜独特な裏声

グィン(裏声を瞬間的に含めるこぶしの一種)と呼ばれるこぶしとファルセットを多用する歌唱法と、音域がとても広いことが奄美の島唄の最大の特徴です。この独特な裏声を多用するのはなぜなのか?それには様々な説があります。

以前紹介したショチョガマなどの伝統行事の中では、必ずと言っていいほど島唄が歌われます。神事の中で歌われる島唄は、とても神秘的で美しくその場を清めてくれるようです。このように奄美の島唄や琉球民謡は宗教と関係しており、裏声は奄美のユタ・ノロなどの叫び声など神事や聖なる行為と深く関連していると言われています。

また奄美では前回も紹介した通り「オナリ(姉妹)神信仰」が強く、霊的にも文化的にも女性の地位が高いため、裏声を使う事で生まれつき高音の女性の声に近づけたい!という男性の願望があったからとも言われています。

この他に、漁師同士が海上でのやりとりに裏声を利用したり、険しい山あいに住む島人の暮らしの中で遠くまで響く裏声が伝達手段として利用されていたからという説。薩摩の厳しい支配下で島人の苦しみなどの叫びはストレートに表現できなかったからという説や、音質の効果と音域を広げる目的から使うようになったという説など、これらのことが考えられています。

〜奄美三味線とは

他に奄美の島唄の特徴は三味線にあります。琉球民謡で使われる三線(サンシン)と見た目はほとんど同じように見えるのですが、少し構造が異なり奄美の三味線の方が一回り大きいそうです。裏声を多用する奄美の島唄に合わせ高音が出るように、三味線の弦が沖縄の三線よりも一回り細くなっています。

また、竹を細くしなるようにしたバチを使って三味線を弾きます。一般的に三線や三味線のバチというのは大きな爪のようなものや、イチョウの葉のような形をしたものをよく目にすると思いますが、細長い棒のようなバチは珍しいですよね。島唄の唄者は自分が弾きやすいバチの硬さになるよう、サンドペーパーで削って調節するのだそう。このしなるバチが奄美三味線のシャープな音を奏でます。

奄美の島唄は集落ごとに伝わる島唄もあり、数えきれないほどたくさんの唄があります。島人の生活に密接した労働歌や、宴会やお祝いの席などで唄われるもの、男女が歌の掛け合いをする唄遊び(うたあしび)はフリースタイルなので唄う人によって歌詞や節回までも変わり島唄の面白さをより感じることができると思います。

今では父も年を取り自宅で飲み会をする機会はめっきり減りましたが、私が子供の頃は父が職場の人や近所の人たちと自宅で飲み会をする際には島唄が得意な人が三味線を片手に飲みにきて、飲みの席で島唄を歌っていました。大人達が飲みながら島唄を歌ってる姿は、子供から見てもとても楽しそうでワクワクしたのを覚えています。

奄美には観光客でもこのような唄遊び(うたあしび)を体験できる居酒屋が何軒かあります。島唄を聴きながら奄美の美味しい料理を食べたり、一緒に島唄を歌ったりできるんです。また、奄美三味線を弾いてみよう!という体験レッスンもあり、初心者や観光客でも気軽に奄美の三味線や島唄に触れることができます。私も三味線は弾いたことがないので、体験レッスンを受けて簡単な島唄を1曲でも弾けるようになりたいなぁと思っています。奄美へ行かれた際には、唄遊びや奄美三味線を体験してみると奄美をさらに満喫できるかもしれませんよ!

島人と島唄(生活の中の島唄)

帰省すると奄美空港へ降り立った時から島唄が出迎えてくれます。流れてくる島唄を聴きながら荷物を待っていると、地元に戻ってきたなぁ〜とホッとした気持ちになります。子供の頃から町内放送や集落内の放送では島唄がよく流れていて、島人には島唄のメロディーやリズムが肌に染み付いているのだと思います。

島唄を唄うプロを唄者(うたしゃ)と呼ぶのですが、島人の誰もが唄者のようにグィンや裏声を使って島唄を歌えるわけではありません。私も島唄を習い事としてちゃんと習った事が無いので、唄者のようには歌えません。しかし小さい頃から島人がよく耳にするメジャーな島唄は、小学校で地域のおばさんやおじさんから教えてもらう機会があったので今でも歌えます。私の小学校では地域の伝統行事がある際、島唄が上手な集落のおじさん・おばさんが学校まで教えにきてくれていました。方言が分からない私たちに歌詞の意味や、チヂン太鼓の叩き方、三味線の弾き方などを教えてくれました。いつも集落内で挨拶するおばさん達が唄者のように島唄を唄う姿を見て、子供ながらにかっこいいなぁ〜あんな風に歌えるようになりたいなぁ…と思いながら眺めていたのを覚えています。

哀愁や切なさを感じる島唄が多い中、奄美の結婚式やお祝いの席の最後にはとても明るく軽快なリズムの「六調(ろくちょう)」という島唄に合わせその場にいるみんなで踊ります。お祝いの席ではもちろん、小学校の運動会の最後でも全校生徒と観覧している集落の人たち全員で「六調」に合わせて踊っていました。

この「六調」という島唄はなんとなくJAZZと通づるものがあり、その場で唄う人や演奏する人によって歌詞やリズムが変わります。ちゃんとした形式がない唄ですが、チヂン太鼓と三味線が織りなすグルーヴには島人のソウルを感じます。きっと踊ったことがない初めて聴く人でも、ついついリズムに乗り体を動かしたくなると思います。私は東京で結婚式を挙げたのですが、式の最後に六調を会場のみんなで踊りました。東京の友人達が初めて聴く六調に合わせ、島人と一緒に踊ってくれた光景は一生忘れられない思い出になっています。

現在でも集落の行事が近づいてくると、子供達が体育館で島唄や三味線の練習をしている姿を見かけます。帰省した際、集落の行事に子供と一緒に参加させてもらうことが多いのですが、私が子供の頃よりも上手に子供達が自分たちで島唄を歌い、チヂン太鼓を叩き三味線を弾く姿を見てとても驚きました。大人達じゃなく子供達が中心となって地域の行事を楽しんでいる姿は、とてもキラキラしていて島の希望だなぁと感動したのを覚えています。脈々と次の世代へとこのシマ(集落)の島唄が受け継がれていっているんだなぁと感じ、島外に住んでいる私も少しでも文化の伝承に貢献したい!と改めて強く思った出来事でした。それがこのブラトラでの記事を書くことにも繋がっています。

「島の心」奄美の島唄を、実際に聴いてもらうと奄美の歴史や文化をより深く理解できるのではないでしょうか?奄美で聴くことができなくても、いろんな唄者が歌う島唄を動画サイトなどで聴くことができます。同じ島唄でも唄者によって変わる島唄は、聴き比べてみるのも楽しいですよ!おうちに居ながらでも奄美の風を感じ、島時間を過ごしてみませんか?

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