食と日常。奄美・有田の文化を紹介|ブラトラ

TRIP

かつて栄えた器づくりの伝統と文化を紡ぐ

ある時から器に興味を持ち、陶器と磁器の違いなどさほど気に留めずに過ごしてきたが、BLATRAを立ち上げるときに真っ先に取り上げたいと思ったのは有田だった。自身も恥ずかしながら15年強も陶芸が趣味として続くとは思っていなかったが、なにぶん自身が欲しいと思うドンピシャな器にこれまで出会ったことがなかったので、どうにか自分の手で作り出そうともがいていた。

日本が誇る文化、そして多くの人が魅了される器の数々
登り窯から立ち上がる煙はいまは昔の話。

有田の町には今も多くの窯元が存在し、レンガで高く積み上げられたあちこちの煙突から、多くの煙が立ち昇っていたと思わせる光景が今も残っている。ただ、現在多くの窯元では、電気釜が導入され、煙があちらこちらから立ち登る光景を目にすることはもうないのだろうか。

有田特集のため初めて有田を訪れた際、宿泊先のアリタハウスがあるアリタセラ(有田焼工業卸売団地)で器を見て回った。アリタセラは、これまでにも何度か器を購入したことがある1616/arita japanの百田陶園や2016/ arita、KIHARA ARITA本店など22店舗の陶磁器ショップが軒を連ね、有田焼専門の大規模ショッピングモールで、そんなアリタセラに軒を連ねるショップで器を見るも、販売されている器の数が膨大すぎて選びきれずに初日が終わった。

その夜、アリタハウスに併設されたレストランで、美味なる料理が綺麗に盛られた器の数々に、どんどん恋する素敵な時間を過ごした。この時、料理があっての器であり、器があっての料理であると改めて実感した。その感動たるや、これまでの人生で指折りに入る感動があった。このアリタハウスに併設されたレストランについては近日お届けする。

料理があっての器、器があっての料理

前項で「料理があっての器、器があっての料理」と書いたが、私は「料理を盛りたくなる器」「器に盛りたくなる料理」と別々の見方をすれば良いと思う。

いつも作る料理、特別な日に作る料理など、さまざまなシチュエーションを想像して器を選ぶ見方もあれば、気になる器、一目惚れで出会った器を手に、その器に「どんな料理を盛ろうか」「どうやったら美味しそうに見えるだろうか」「美しいアートの様な一皿になるだろうか」などなど想像しながら選ぶのも器選びの醍醐味なのではないだろうか。

さて、有田焼だから普段使いしてはいけないという訳ではない。むしろ普段から使い込み、日常の一コマに登場させてもいいだろう。きっと毎日の食卓が華やかになったりすることだってあるだろう。子供が小さい我が家では、子供が割ってしまうのではないだろうかという恐怖心から、一歩を踏み出せなかったが、今ではごく当たり前に有田焼のお皿”も”食卓に並ぶことだってある。

「有田焼のお皿も」と言ったのは、大手北欧家具メーカーの大量生産品であるプラスチックのお皿、独身時代から愛用している無印良品、さらにはノベルティでもらった器などと共存している。むしろ有田焼のお皿であることは、購入した本人以外に誰も知る由がない。ちなみに有田焼だからと言って、何でもかんでも値段が高いわけでもない。もちろん高い器も存在するのだが、リーズナブルな器もある場合によってはセレクトショップのお皿の方が高価だったりする。だから、有田に行って一度見てみると「高い器」そうに見えて、そうでもない器に出会えるかもしれない。

気になった器があれば手に取ってみて欲しい

器を取り上げるにあたり、なにが伝えたいか。それは、「気になった器があれば手に取ってみて欲しい」と言うことだ。

有田焼や伊万里焼など、一度は耳にしたことがある器だと、「どうせ高くて日常に使うにはもったいない」と思っている人が多く、その固定概念を崩し、もっと沢山の人に器選びの楽しさを共感して欲しい。そういった事を伝えたいと思ったのだ。高い、安いの価値観人それぞれ違うし、もちろん冒頭に述べた通り、自身も思った「子供が小さいうちは怖い」と言うタイミングもあるだろう。だから、家庭の事情にもよると思う。我が家でも。有田焼の器を食卓に並べる様になったのはごく最近の事で、きっかけは子供の一言だった。

子供ながらにして美しく可愛いと思えた器たち

 子供の感性は大人以上に素直で、値段のことなど気にすることもなく、ただ美しい、可愛い、カッコいいなど、見たままの素直な感想を口にしてくれる。気がつけば、子供がお気に入りの器を見つけ、妻が出す料理の取り皿を自分たちで選ぶ様になった事がきっかけで、それまで買い溜めてきた器を普段使いする様になった。無論、まだ触ってほしくないと思っている少し高級な器は、子供たちの目に入らないところに隠し持っているのは、私たち夫婦だけの秘密。さらに言えば、妻が存在を知らないお皿は、もっと厳重の保管されている。言い方を変えれば、頃合いが来るまで隠してあるのだが。ともかく、子供たちが器を選ぶ姿が微笑ましくも一瞬だが鼻高々な瞬間なのだ。

さらに器がきっかけで子供たちの中で芽生えたものがあった。それは器づくりへの興味だった。残念ながらコロナ渦と言うこともあり、陶芸教室に出掛けることは出来なかったが、お友達のお母さんが開催してくれたポーセラーツ教室に飛び入り参加して、出来上がったお皿を愛用している。ちなみに子供たちが作ったお皿の値段は、有田焼のお皿よりも高級だ。なんせレッスン料も材料費もかかっているのだから。

有田で体験できる器作り

有田に行けば、絵付けやロクロなど器作りを体験する事ができる。値段のことばかり書いて申し訳ないが、体験という付加価値があるから、もちろん安くはない器を間接的に購入することになる。

自分で作った器も、作家さんが一点一点手作りした器も、大量生産の器も、どれも購入の先に、器として活用する価値が見出される。それは器本来の役割である器に料理を盛る事で、華やかにも美味なるものにも変化させてくれる価値だ。その他にも料理するのが楽しくなる価値、場合によっては所持すること自体が価値になるのかもしれない。体験で出来上がった器は、唯一無二のオリジナル作品としての特別な価値でもあるのだろう。よく「体験できます」と書いてあるが、僕は「オリジナルが作れます!」だと思う。

 それがロクロや手捻りなら、形のオリジナル、絵付けなら柄のオリジナルなんだろう。家族全員で絵付けを体験すれば、形は同じだがそれぞれの個性で、唯一無二の価値でありながら家族として共通の価値をそこに見出せるだろう。もっとも絵が得意でない僕は遠慮して、絵の得意な長女に自分の分もお願いする。いい様に言えば、娘から貰える貴重な思い出という価値がそこにはある。

さてさて、イントロが長くなってしまったが、いよいよBLATRAで新シリーズが始まる。もう冒頭から『有田』『有田焼』と書いているから想像がつくと思うが、有田特集だ。有田特集では器のことをベースとした連載になるが、そこからどんどん発展していく事を予定している。なぜならば取材で何度か通ううちに、佐賀がとても魅力的であることに気付いたからだ。佐賀の魅力を、有田での出会いを通して発展させていければと思う。

美術品や骨董品ではない有田焼

「有田焼」といえば、日本で初めて磁器が焼かれ、その後400年以上の歴史がある焼き物で、日本のみならず世界から愛される焼き物の一つだ。だからなのか、人々のイメージには「高級」とか、「美術品」なんて思っている人も少なくはないようだ。さらに追い打ちをかけるように、高級料亭や格式のあるレストランなどで使用されていることから、日常のお皿というイメージが、特に若い人たちにはないのも事実だろう。また、大量生産・大量消費時代に生きている私たちには、贅沢品であると捉えている人も多いのではないだろうか。

最近の消費者傾向は、コロナ前と違い「高くても良いもの」を手にする人が増えたと聞くが、『高くても』の部分には、少し懐疑的である。それは「安い」「高い」と感じるのは人それぞれだから。前項でも書いたが、値段の価値観は人それぞれであるのだから、『「良いもの」を手にする人が増えた』で、良いと思う。

ちなみに、「良いもの」が意味することも人それぞれであり、「長く使えるもの」「かっこいいもの」「可愛いもの」と様々な感覚だ。だからこそ、これらの点を深掘りしても何も意味がないのも確かだ。

そこで私が大事にしたいものは「直感」であり、『欲しい』と思ったものが『手に入る』それで幸せな気分になれるのではないだろうか。しかし、そもそも人々が器に出逢い、手に取って、欲しいと思って購入しない限り、有田焼もそうだが、伝統工芸品というのはそのうちなくなってしまう。それは、作り続けてもお金にならないからだ。すると、後継者が育つはずもなく、もっともっと入手が困難になる。

私たちは、なくなると分かった瞬間に、”恋しくなり、欲しくなる”。すると高価になり、欲しくなっても手に入れるのが難しくなる。買えなくなるのが寂しいのもだが、何より日本が誇れる伝統工芸品、そしてそれを作る伝統や人材、時にはそれらを使う文化までも失ってしまう。

日本が誇れる伝統・文化はたくさんあるけれども、衰退の一途を辿っているものも同時にたくさんある。その伝統や文化を守る手助けをしたい。いささか、大風呂敷を広げている気もするが、私たちBLATRAにできることを、魅力やちょっとしたキッカケを、私たち編集者の想いとしてお届けすることが、少しでもその”守る”ことに寄与できるのではないかと考えた。

より多くの人にその想いが伝わって欲しいと思うが、一人でも多くの方に想いが伝わり、行ってみよう、買ってみようとなって貰えたならば幸いだ。

では、プロローグはこの辺にして、来週からは有田・佐賀の旅へ出掛けてみよう。

まずは有田といえば有田焼。その有田焼についてお届けする。

文・写真:文:Daisuke Kinoshita(PLTRA inc.)

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