奄美小噺 Vol.2 奄美の男の子(インガ)の節句

佑美

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5月5日「ゴガツゴンチ」

今日は5月5日「端午の節句」、鯉のぼりや兜を飾り男の子が逞しく強く育つようにと祈りを込め成長を祝う日です。奄美では前回紹介した3月3日サンガツサンチと同様に、この端午の節句も旧暦の5月5日ゴガツゴンチ(今年は6月14日)に祝います。

奄美ではこの日「悪霊を払い万病を避ける」と言われている菖蒲の葉とヨモギを軒先に吊るし、魔除けをします。

奄美の中でも大和村(やまとそん)の名音(なおん)集落では「がや」という植物と餅米で「がやまき」という節句飾りを作り、これを玄関や床柱に飾り無病息災を祈ります。以前は他の集落にもこの風習があったそうですが、今では名音集落にだけ残るとても貴重な風習となっています。

また本土では端午の節句には「柏餅」や「ちまき」を食べる風習があると思いますが、奄美では「あくまき」という一風変わった餅菓子を食べる風習があります。
琉球や薩摩の文化が入り混じっている奄美大島。この端午の節句に「あくまき」を食べるという風習は薩摩の方から伝わった風習であり、鹿児島や宮崎など南九州では「あくまき」を食べるそうです。

「あくまき」とは?

この「あくまき」は関ヶ原の戦いで島津義弘公が日持ちのする食料として持参したのが始まりだと言われているそうです。※諸説あります。

「あくまき」は漢字で「灰汁巻き」と書きます。この灰汁(あく)というのは、普段私たちが煮込み料理をするときに出るような野菜や肉の灰汁(あく)のことではありません。

竹や木など植物を燃やした灰を水に溶いた灰の汁のことを言います。この灰を溶いた灰汁の中に餅米を一晩浸し、その餅米を竹の皮や晒し(さらし)で包み、灰汁で煮込んで作ります。現在は家庭で作る人はあまりいないそうですが、昔は五右衛門風呂の家が多かったので、お風呂を焚く際に燃やした薪の灰を使用し各家庭であくまきを作っていたそうです。

普通の餅だと冷めると硬くなるのですが、あくまきは灰汁に含まれる豊富なアルカリ性によって餅米が糊のようになるため、わらび餅のようなプルプルした食感になり冷めても柔らかいままなのです。また同じくアルカリ性の作用で琥珀色〜茶色に色づき、独特な硫黄のような匂いがつきます。灰汁の中に漬け込む時間や煮込む時間によって、独特な匂いやえぐみが強くなるため手作りするときは時間の調節がとても大事になってくるそうです。

そのまま何もつけずに食べると少しえぐみを感じるので、奄美では砂糖やざらめを絡める食べ方が一般的です。鹿児島の方ではきな粉をたっぷりとかける食べ方が一般的らしく、わさび醤油で食べる地域もあるんだとか。同じ風習でも地域によって色々な食べ方があるのが面白いですね。

少しクセのある郷土菓子「あくまき」。実は、私は独特な香りが苦手で子供の頃は食べれなかったんです。

しかし今回、きな粉をつける食べ方や色々な食べ方があることを知って、大人になった今なら美味しく食べれるかもしれない…改めて食べてみたい!と思いました。

鹿児島のお土産などを販売しているオンラインショップでお取り寄せできるので、奄美へ行けなくても味わうことができます。製造元によって風味や食感の違いがあるそうなので、食べ比べてみるのも楽しいですね。

今年の5月5日「ゴガツゴンチ(新暦6月14日)」は、子供たちの成長をミネラル豊富で昔ながらの健康食品でもある「あくまき」で祝ってみてはいかがでしょうか?

一味違った端午の節句を楽しめ、子供にとっても思い出に残る1日になるかもしれませんよ。

文:佑美 イラスト:Yu Ikari