「命のゆりかご」奄美大島の豊かな自然

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国内最後の自然遺産と言われている「奄美大島・徳之島・沖縄島北部および西表島」について、諮問機関(国際自然保護連合)が世界自然遺産に登録することが相応しいという勧告を世界遺産センターに行ったことが日本政府に伝えられ、話題になりました。

諮問機関の登録勧告はそのまま世界遺産として認められることが通例であり、7月16日からオンラインで開かれる世界遺産委員会で正式に登録される見通しです。

コロナ禍で混沌とした情勢の中、奄美大島の豊かな自然が国際的に認められ私にとってもとても嬉しいニュースでした。

この世界自然遺産に登録される中でも、特に固有種や絶滅危惧種が多く生息する奄美大島。どうして奄美大島にこのような貴重な生き物がたくさんいるのか、その秘密を紐解きながら貴重な生き物たちを少し紹介していきたいと思います。

奄美が固有種の宝庫となったわけ

奄美大島は日本の面積の約0.2%しかないのですが、日本に生息する生き物(魚類を除く脊椎動物)の種類の42.7%がこの小さな島の中に生息しています。

この中でも代表的な「アマミノクロウサギ」は生きた化石と呼ばれ、最も原始的な姿を残したウサギであり独自の進化を遂げています。またイボイモリも同様に生きた化石と呼ばれ、最も原始的な形態をとどめている生物です。このように遥か昔から形を変えずに存在してきた種が、今でも奄美には数多く生息しているのです。これには奄美大島の成り立ちなどが大きく関係しています。

約1000万年前、奄美大島はユーラシア大陸と陸続きでした。地殻変動や海面変動によって長い年月をかけて大陸から切り離され、今のような島の形になりました。大陸から切り離されたことにより大陸側では氷河期で死滅してしまった種が、島の方では生き残り独自の進化を遂げ、アマミノクロウサギのような原始的な固有種が奄美には存在しているのです。

また奄美は昔から自然崇拝の島ということもあり、人と自然が程よい距離を保ちながら共存してきました。その背景には奄美の森には昔から毒蛇「ハブ」が生息していたため、ハブを恐れ森に必要以上に踏み入ることをしてこなかったと言われています。

ハブのおかげで奄美の森は乱開発されることなく守られてきたのです。そのため島ではハブは「森の守り神」とも呼ばれています。

そして今年も5月初旬に全国的に一足先に梅雨入りをした奄美大島。長い梅雨の時期が始まりました。今日は天気がいいな〜と思っていても急に雲行きが怪しくなりスコールが降ったりと、奄美大島は1年を通して本当に雨が多い島です。

奄美は亜熱帯性気候に属しており、冬でも暖かく年間を通してとても過ごしやすい気候です。世界的に見ると亜熱帯性気候の土地は雨が少なく砂漠地帯や乾燥地帯が多いのですが、奄美は亜熱帯性気候でありながらも雨が多いという特殊な地域であり、これが奄美の豊かな森を作り出す要因の一つとなっています。

個性的な奄美の生き物たち

〜夏の訪れを告げるリュウキュウアカショウビン〜

長い梅雨が明け本格的に夏が始まると、奄美の生き物たちも活動的になり自然観察やレジャーにはもってこいの時期になります。

夏の訪れを教えてくれるのが「リュウキュウアカショウビン」という鳥です。夏が近づいてくると明け方や夕方に「キューロロロロ…」という鈴を転がすような澄んだ鳴き声が山から響いてきます。全身が赤褐色で、カワセミの仲間なので特徴的な大きな口ばしは特に鮮やかな赤色をしており、クルっとした瞳で愛らしい顔をしています。

田中一村の絵画にも度々描かれており、その中でも「ビロウとアカショウビン」という作品は奄美で有名な黒糖焼酎のラベルにもなっています。

奄美に帰省した際、この声が山から聞こえてくると「夏だなぁ。島に帰ってきたな〜」としみじみと感じます。明け方この声で目覚めるのがとても心地よく、ずっと聴いていたくなるような鳴き声です。この声が奄美では「クッカルルル…」と聞こえるということから、方言で「クッカル」と呼ばれ親しまれています。

〜奄美のシンボル、アマミノクロウサギ〜

奄美を代表する生き物といえば、なんといってもアマミノクロウサギです。最近ではテレビ番組などでも取り上げられることも多く、知っている方も多いのではないでしょうか?

黒い毛に覆われ短い耳が特徴的で、その可愛らしい姿がとても人気です。奄美のシンボルとしてお土産品や奄美市のキャラクターのモチーフにもなっており、奄美でとても大切にされています。

このアマミノクロウサギ、夜行性ということもあり島で普通に生活している中ではほとんど目にすることはできません。私も奄美で生活していた時には実際に見たことがありません。夜間に人間があまり通らない山道などに出没するので、奄美の道路にはアマミノクロウサギの飛び出しを注意喚起する標識が所々に設置されています。

最近では観光客向けのナイトツアーを行う会社が多くあり、このようなツアーに参加するとアマミノクロウサギがよく出没するスポットへ行き観察できるようです。コロナが落ち着いて帰省できた際には、私もぜひナイトツアーに参加してみたいと思っています。

〜美しい見た目と鳴き声のギャップが面白いルリカケス〜

鮮やかな瑠璃色の羽と赤褐色の羽が美しいルリカケス。奄美大島・加計呂麻島・請島でしか見ることができません。天然記念物であり鹿児島県の県鳥に指定されているとても貴重な鳥です。2色の羽が鮮やかで見た目はとても美しいのですが、鳴き声はギャーギャーと風情のない声で鳴くのが印象的です。

奄美でしか生息しない貴重な鳥なのですが、島では民家の軒先などに巣を作ることも多くとても身近な鳥です。私の実家の軒先でも巣を作っていた時期があり、朝からギャーギャーと騒がしかったのを覚えています。

まだまだここで紹介できないぐらいたくさんの貴重な生き物が奄美には生息しています。このような貴重な生き物たちが身近にある奄美の環境は、これからも私たちが次世代へと繋いで守っていかなければならない大切なものだと思います。

未来へ紡いでいくために

今回このような世界自然遺産への登録勧告を受け、コロナが落ち着いた後には今まで以上に来島者が増えることが予想されます。観光客が増えることは喜ばしいことではあるのですが、一方で人と自然との距離をどのように保っていくかが課題になってくると思います。観光客が増えたがために自然が荒らされるようなことがあってはなりません。奄美では現在ナイトツアーのルール策定のため、ツアーの車両を規制する実証実験が行われています。他にも原生林への散策には認定エコツアーガイドの同行等をお願いするルールも施行されています。これらは豊かな奄美の自然を次世代へと繋いでいくために必要なルールなので、島を訪れる際にはしっかりとルールを守りながら楽しんでもらえたらと思います。

また今回の世界自然遺産への登録範囲となっている奄美大島をはじめとする南西諸島は、自然崇拝の島が多く、普段人が立ち入ってはいけない神事などに使用する神聖な場所もたくさんあります。興味本位で勝手に立ち入ったりせず地元のルールや礼節を守り、島内外のみんなで協力しながら大切な自然や文化を守っていけたらいいなと切に思います。

奄美の先人たちが遥か昔からずっと紡いできた「人は自然の中で生かされている」という大切な教えを、これからもずっと次世代へと紡いでいきたいですね。

次回はこの豊かな自然の恩恵を受けた奄美大島の郷土料理や特産品などを紹介したいと思います。