私は焼き物が好きで普段から生活雑貨屋で食器を見たりするのが趣味なのですが、福岡に引っ越してきてから福岡の小石原、佐賀の有田・伊万里や長崎の波佐見など「焼き物の街」が近くなったこともあり更に焼き物に興味を持つようになりました。
今まで伊万里と波佐見には行ったことはあったのですが、有田へ行くのは今回が初めて。家族と出かける時はいつも車で出かけるのですが、今回は博多からオレンジ色のカラフルな電車に乗って有田へと向かいました。子供が産まれてから初めて一人で行く自分のための旅行。大好きな友人であり、小学生の子を持つママ友でもあり、奄美の記事でいつも素敵なイラストを描いてくれているYuちゃんと有田駅で待ち合わせをして有田観光をするショートトリップ。みなさんにも旅気分を味わってもらえたら嬉しいです!
博多から1時間ちょっとで行ける有田
福岡は博多から電車に揺られ1時間25分。有田に近づくにつれ、車窓から窯元であろう煙突のある景色が見えてきて、焼き物の町に近づいてきてる!というのが実感できます。
線路沿いには鳥居が見え、「線路のそばにある珍しい鳥居」と思いながら少し上のほうに目線を送ると、別の白い鳥居も見えました。ここは有田で有名な有田焼陶祖の神 陶山神社です。鳥居が有田焼で出来ているため、遠くから見ると鳥居がキラキラと白く光って見えました。
大好きな友人にもうすぐ会える!というワクワクと初めて行く場所へのドキドキ。陶山神社を過ぎたら有田駅はすぐそこです。
「有田」というと有名な場所なので大きな駅舎を想像していたのですが、実際に駅に着いてみると意外や意外!とても素朴で昔ながらの小さな駅舎でした。自動改札はなく改札口に駅員さんが立っており切符を回収しています。駅員さんに切符を手渡すと、なんだか懐かしさを感じました。改札を出ると友人が待っており、久しぶりの再会に胸が熱くなりました。お互いに子供を置いて初めてのこの”ママ友旅”。”女子旅”です。
自転車を駆って、まずは九州陶磁文化館で歴史を知る
今回は女子旅なのでレンタカーは借りず、レンタサイクルでのんびり有田を回る自転車旅。駅のコインロッカーに荷物を預け、駅すぐ近くの観光案内所「KILN ARITA(キルンアリタ)」へ向かいます。ここでレンタサイクルの受付をしているんです。私たちが行った時にはママチャリとマウンテンバイクの2種類が選べました。どちらも電動アシスト付きの自転車です。いつも子供を自転車に乗せて移動している私たち。もちろん乗り慣れているママチャリを選びました。乗る前に案内所の方が新型コロナ感染対策のためハンドルやサドルなど丁寧に消毒してくれました。ここから有田の自転車旅がいよいよ始まります!まずは有田焼のことを知るために「九州陶磁文化館」へ出発!
観光案内所から九州陶磁文化館への道のりは10分ほどの距離でしたが、九州陶磁文化館へ辿り着くには急な坂道が待ち受けているので、電動自転車でないと坂を上りきれないかもしれません。その急な坂道を自転車で上ると、大きな建物が見えてきます。これが九州陶磁文化館です。無料でありながらも歴史的な有田焼から現代の有田焼に至るまで多数の作品が展示されています。
中へ入ると「こんな立派なものを無料で見てもいいんですか!?」と言いたくなるほど本当に素敵な場所でした。古唐津や古伊万里などの古陶磁から、現在の陶芸家たちの作品が数多く展示されており、陶磁器の歴史や文化、伊万里焼や有田焼との違いなど焼き物に関する知識をたくさん学べます。
常設展示されている柴田コレクションは圧巻です。私はアートに疎いので美術館の見方などあまり分からないのですが、膨大な数のコレクションを見ながら、これは一体何を入れる器なんだろう!?とか、私だったらこの器にはあの料理を盛り付けたいなぁ…なんてことを考えながら楽しめました。本当に色々な器が展示されているので、自分のお気に入りを見つける感じで見ても楽しいかもしれません。
いざ、有田の町へ
九州陶磁文化館を堪能した後は、有田の町へ再びペダルを漕ぎ出します。この日は真夏日で風が吹かないとじっとりと汗が噴き出てくるほどでしたが、自転車に乗っている時は風がとても心地よかったです。
有田の町を自転車で回ってみると、窯元の煙突が並ぶ景色や昔の町屋が軒を連ね有田の歴史を感じることができます。国の重要伝統的建造物群保存地区になっている内山地区の街並みは歴史的な建物がたくさんあり情緒あふれる風景が広がっています。大通りから細い裏通りに入ると、夏の暑い日差しを受けたトンバイ塀がレフ板の如く日差しを反射して広く輝き、レンガが際立って見えました。古い歴史的な建物とトンバイ屏が織りなす景色は、まるでジブリの世界に迷い込んだような気分になります。このトンバイ塀の小道は道幅が狭い場所が多いので、自転車を降りてゆっくり散策するのがオススメです。
さらに、自転車を走らせていくと電車の車窓から見えた陶山神社に到着。階段を上ると、線路があり線路の向こう側に一つ目の鳥居と境内へと続く階段が見えてきます。参道の階段と鳥居の間を電車が横切る光景はここでしか見られない光景です。線路を渡り、一つ目の鳥居をくぐって階段を登ると有田焼でできた鳥居が見えてきます。夏の日差しを受け、鳥居がキラキラと光を放っているように見えました。鳥居だけでなく狛犬や玉垣も有田焼でできておりここが有田のシンボルだということが分かります。
階段を登りきった陶山神社の本殿からは有田の景色を見渡すことができます。所々に窯元の煙突が見え、のどかで静かな有田の町が一望でき穏やかな気持ちになりました。陶山神社で一息ついたあとは、絵付体験ができる「赤絵座」へと向かいます。
伝統の呉須で有田焼に絵付け体験
赤絵座は陶山神社から自転車で5分もかからないほど近く、有田のメインストリート「皿山通り」にあります。赤絵座で絵付け体験するには事前予約が必要です。
この赤絵座は有田町で作陶を行う若手の作家さんたちへ提供されている工房で、絵付け体験では作家さんが絵付けについて丁寧に教えてくれました。絵付けをする器やマグカップなど7種類の中から選べ、私は大きめのお茶碗にもなる器を選びました。
絵を描くのが得意ではない私は線と点だけをお皿に描いたのですが、下手なりにもシンプルないい感じに仕上がりました!一緒に体験をしたYuちゃんはBLATRAで私の記事のイラストを書いてくれていながら、アートの仕事をしているので、かわいい貝殻の絵柄を描いておりとても素敵に仕上がっていました。絵付けをするのに特に時間の制限などもなかったのでゆったりと自分のペースで描け、久しぶりに一つのことに没頭して集中する時間はとても心地のいい時間でした。子供たちと一緒に体験しても楽しいだろうなぁと思いました。私のように絵が得意でない人も大人から子供まで、みんなで気軽に楽しめる体験だと思います。
絵付けを終えた器は作家さんが工房で焼いてくれ、自宅まで配送してもらえます。自宅に届くまでは2週間〜1ヶ月ぐらいかかりますが、完成品がどんな感じになっているのかワクワクしながら待つ時間さえも楽しかったです。
自宅に届いた時にはドキドキしながら箱を開けました。思った通りに線の濃淡が出ている部分に感動したり、もっとこの部分を丁寧にやればよかったな…と思ったり、完成品は不完全だけど世界にたった一つの自分の器と思うととても愛しく思え、旅の思い出が詰まった私の宝物の一つになりました。
文:佑美
写真:Daisuke Kinoshita (PLTRA inc.)
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