前回の記事では、「脱 “なんとなくワイン選び”のために、ワインラベルの内容を理解するべし!」というお話をしました。今回からは具体的に、ラベル内容の理解のために注目してほしいポイントをお話します。
まずはワイン産地について。ゴールは「ワインラベルからワインの産地を読みとって、自分好みの1本を選べるようになること!」です。
暖かい地域と涼しい地域
はじめに、「産地による味わいの違い」を紐ときます。ここでいう “産地”とは、ワインの原料となるブドウの産地です。ブドウ産地はざっくり2種類に分けられます。 “暖かい地域“と “涼しい地域“です。それぞれ次のような特徴があります。
【 暖かい地域 】
ブドウが熟しやすく、糖度が高め
【 涼しい地域 】
ブドウが熟しにくく、糖度が低め
他の果物を想像してみてください。涼しい地方の果物(リンゴやイチゴ、ミカンなど)は甘さ控えめで酸味がたっているイメージが、暖かい地方の果物(マンゴーやバナナなど)はとろける甘さのイメージがありますよね。ワインの原料ブドウもそれと同じ。栽培地域の平均気温によって甘味と酸味のバランスが変化するのです。
“原料ブドウの糖度の高さ“は、ワインの味わいに大きく影響します。糖はワインの発酵(アルコール発酵)に大きな役割を果たすからです。
原料ブドウに糖が多いと、アルコール発酵が活発に行われます。分解する材料がたくさんあるので、酵母がはりきって働くわけです。そうすると、副産物であるアルコールもたくさん生成され、アルコール度数が高くなります。分解しきれない糖はワインの中に残り、甘味を感じる仕上がりになることもあります。結果、フルーティで濃いワイン(フルボディのワイン)が出来あがります。
原料ブドウに糖が少ない場合はその逆です。アルコール発酵が比較的緩やかに進み、アルコール度数が低めに抑えられます。ほぼ全ての糖が分解されることで甘味は残らず、軽やかな飲み口の辛口ワイン(ライトボディのワイン)が出来あがります。
フルーティなフルボディ・ワインが好きなら暖かい地域のものを、繊細で辛口なワインが好きなら涼しい地域のものを選べばよいのです。
厳密に言うとワインの味わいに影響する要素は、ブドウ栽培地域の日照時間や1日の寒暖差、醸造過程の工夫など、平均気温以外にもたくさんあります。全てを考慮すると非常に複雑になってしまうので、そこはワインのプロ=ソムリエにお任せして、まずは暖かい地域と涼しい地域の違いを理解してみましょう。
どこが暖かくて、どこが寒いのか
「いったい、暖かい地域とはどこで、涼しい地域とはどこなのか?」が問題です。北ほど寒く、南ほど暖かいというイメージがありますが、地球が丸いことを考慮するともう少し複雑です。ずーっと南に進み続けたら、行き着く先は南極大陸、極寒の地ですからね。
簡単にいうと、地球上では赤道付近が最も暑い場所です。そこから南北に向かって徐々に涼しくなっていきます。
赤いラインが赤道、緑色の帯はワインの原料ブドウが栽培されている緯度の範囲です(注)。この帯上にあって、より赤道に近い場所(暖かい地域)で造られるワインはフルーティ・フルボディ型、より赤道から離れた場所(涼しい地域)で造られるワインは繊細辛口型と考えます。
注)最近では地球温暖化の影響でこの範囲におさまらない場所でもワイン用ブドウが栽培されているようです。
次の表は大雑把な仕分けです。暖かい地域に入っている国の中でも、細かい気候条件や冷たい海流などによって局地的に涼しい場所が存在することもあります。ただ、そんな細かいことを考えながらワインを選ぼうとすると、難易度がぐっと高まってしまいます。まずは大雑把でもいいので、暖かい地域と涼しい地域を頭の中にいれてしまいましょう。地図を眺めながらだとよりイメージしやすいので、お試しください。
北半球 | 南半球 | |
暖かい地域 | イタリア南部、スペイン、フランス南部、アメリカ南部など | チリ、アルゼンチン、南アフリカ、オーストラリアなど |
涼しい地域 | ドイツ、イタリア北部、フランス北部、カナダ、アメリカ北部など | オーストラリア(タスマニア島)、ニュージーランドなど |
ワインラベルで産地を読み解く
脱 “なんとなくワイン選び” Vol.1でも載せたワインラベルを見てみます。
ラベルの文字が細かいので見辛いのですが、裏面(写真向かって右側)のラベルに「SOUTH AFRICA」とあり、南アフリカ産のワインであることがわかります(「W.O.COASTAL REGION」という表示のすぐ上です)。南アフリカということは、上の表によると “南半球の暖かい地域“、つまりこのワインは「フルーティ・フルボディ型のワインなのかな!」と想像することができるわけです。
暖かい地域だと言ったばかりですが「W.O.COASTAL REGION(コスタル・リージョン)」というのは南アフリカの中でも最南端に位置する沿岸エリアを指していて、比較的涼しいと言われています。ドイツやフランス北部などに比べたら “暖かい地域”だけれど、アメリカ南部やチリに比べたら “涼しい地域”とも言える、そんな絶妙な場所です。こういう情報は、ソムリエに教えてもらいましょう。
最後に
ワインは産地によって味わいに違いが生まれます。「どの辺りで造られるワインがどんな味わいに仕上がるのか」を何となく頭にいれておけば、ラベルを眺めながら味わいの予想をたてることができます。ぜひ、チャレンジしてみてください。
しかし、ワインの味わいを決めるのは「暖かい地域か冷たい地域か」だけではありません。実際、日本は “暖かい地域”寄りですが、比較的軽やかな味わいのワインが多く造られています。 産地の平均気温以外にワインの味わいに大きく関わってくる要素…それは”ブドウ品種”です。次回は”ブドウ品種”について、解説します。
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