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島人のアイデンティティ「島口(シマグチ・シマユムタ)」

皆さんの地元には「方言」はありますか?関西弁や博多弁などよく知られている「方言」はもちろんのこと、日本全国のあらゆる地域にその地方独特の「方言」があると思います。

奄美にももちろん「方言」があり、島口「シマグチ」や「シマユムタ」と呼びます。本島や離島でも違い、シマ(集落)ごとに違う「島口」があるので、とても複雑で難解です。今回はそんな奄美の方言「島口」について紹介したいと思います。

奄美の「方言」は「古語」に通ずる

島のおじいちゃんやおばあちゃんが喋っている言葉を聞くと「何語を喋っているの??」と思うほど、標準語と全く発音が違うことにビックリすると思います。奄美出身の私でさえ全部を理解するのは難しく、聞き取ることが多少できても話すことはできません。そんな「島口」の語源はなんと「古語」なのです。

奄美を観光していると、あらゆるところで目や耳にする「うがみんしょうらん」という言葉。これは英語の「Hello」や「Hi」とニュアンスが似ており、時間に関係なく「こんにちは」という挨拶で使われる島口です。「うがみんしょうらん」の語源は古語の「拝(おが)みて候(そうろう)」と言われており、「拝む」は「拝顔する、お目にかかる」という意味です。

他にも島口では「私」のことを「わん」「わぬ」「あぬ」「あ」(他にも集落で違う言い方をする場合もある)などと言い、これは万葉集に現れる「我奴(わぬ)」や「吾(あ)」に遡る言葉とされています。

このように島口には古語が元になっている言葉がたくさんあり、島人が昔から言葉を大切にしてきたことが分かります。

実は私も、方言の語源について詳しく調べるまでよく知らなかったのですが、調べだすととても興味深くもっと知りたい!と思いました。島口を知ることで日本文化にも触れることができ、知識の幅が広がった気がします。

しかし2009年2月、奄美の方言はユネスコにより消滅危機言語の「危険」に分類されています。現在、島口を流暢に話せるのは60〜70代以上の人たちが主で、それより下の年代になると島口と標準語が混じったトン普通語(トンフツゴ)が広がりネイティブ島口は減っていくばかりです。

島口禁止の時代があった

今の時代では考えられないですが、父や母が小学生の頃までは学校内で方言を使用したら罰せられるという「方言禁止」という時代があったそうです。標準語を使うように指導され、学校の友達同士と方言で話していたら「方言を使いました」と言う札を首から下げられたり、廊下に立たされるなどの、罰があったそうです。

島外に出て進学・就職をする際に標準語が喋れないと、島出身と差別されて苦労するから、というのが主な理由で島口が禁止されていたそうです。自身の使っている言葉を否定されるということは、自分のアイデンティティさえも否定されているかのような感覚に陥ると思います。

こんな時代があったという事実が本当にとても悲しくなります。

「方言禁止」の時代があったことや、ラジオやテレビの普及で、標準語に触れることが島内でも多くなってきたこともあり「島口」を日常的に使用することがどんどん減っていきました。そして今では「島口」が消滅危機言語へとなってしまったのです。

私も奄美から上京してすぐの時など奄美の方言や訛りについて少し馬鹿にされたこともあり、悔しい思いをしたことがあります。しかし、無理して標準語で話そうと思ったことは一度もありません。こんな風に人を馬鹿にする人間には自分は絶対ならないぞ、と反面教師にして東京生活を送っていました。

ありのままの自分でいたら、ありのままの相手を認め合える素敵な仲間がたくさんできました。無理して標準語を使ったり、周りに合わせたりして自身を取り繕う必要などなく、後にそれが自分の個性となって強みになるよ!と、これから島を出る子たちに伝えたいです。

奄美でよく聞く「はげーー!!」とは!?

島を出て約20年たつのですが、私はいまだに島口が出ます(笑)

特によく出る島口が「はげ」です。この「はげ」という言葉、驚いた時、嬉しい時、悲しい時、どんな時にも使える魔法の言葉なんです。

久しぶりに友人に会った時に「はげー!!久しぶり!」と言ったり、友人に不幸があった時に「はげー…大変だったね…」と言ったり、びっくりした時に「はげ!??何これ!?」と言ったり、えぇ!?うわ!わぁ!というような感嘆詞として使います。英語でいうと「Oh my gosh!」や「Oh my goodness!」のようにいろんな場面で使える言葉です。

一番染み付いている島口なので、今でも生活の中でびっくりした時やイライラした時などに「はげっー!」と口をついて出てしまいます。職場やこちらの友人の前では言ってないと思います…(たぶんですが。笑)

奄美へ行った際に島人の会話で「はげー!」とあちこちから聞こえてくるかもしれませんが、悪い意味ではないので気にしないでくださいね。

島口のこれから

私が小学校の頃は、島口で劇を演じたり、シマ唄を歌ったり踊ったりする「島口大会」という発表会がありました。普段使わない島口を話すのはとても難しく、「シマ(集落)のおじいちゃんおばあちゃんはすごいなぁ」と思ったことを覚えています。

島口は発音が特に難しく、英語を話すのと同じような感覚なので、シマのおじいちゃんおばあちゃんが英語を勉強したら、すぐに話せるようになるんじゃないか!?と大人になった今でも思います。

消滅危機言語に分類されている奄美の島口。昨今では、島口を後世へと継承して消滅させないようにと様々な取り組みが行われています。

毎年2月18日を「方言の日」と制定し、島口をいろんな人に知ってもらうためのイベントを開催して、広報啓発活動を行っています。

他にも「島口ラジオ体操」というユニークなラジオ体操を制作したり、「あまみエフエム(ローカルラジオ局)」では、島のおじいちゃんやおばあちゃんが島口で喋る番組を放送したりと、島にいなくても奄美の島口に触れられる機会が増えています。

島口のことわざやシマ唄には、生きていく上でとても大事な教訓や精神が込められていおり、シマ唄を勉強すれば学問の半分を得たのも同然だという意味の「歌半学(うたはんがく)」と言う言葉があるほどです。「島口」を学び継承していくことは奄美の先人たちの教えや精神を継承していくということなので、奄美の自然と同様に「島口」も大切に後世へと紡いでいきたいものです。

奄美の島口を聴いてみよう!

島口ラジオ体操

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