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ESSAY

料理下手な男、琺瑯で寒天ゼリーを固める。

約39年、料理をほとんどせずに生きてきたし、したとしてもうまくいかないし、奇跡的にうまくいってもプレッシャーとストレスが異常である(前回前々回コラム参照)ぼくだけれど、ここ3ヶ月ほど、自分で作るある料理のことで頭がいっぱいだ。頭とお腹がいっぱいだ。それは「寒天ゼリー」である。詳しく説明すると、それは寒天をゼリーにしたもの、だ。
そんな寒天ゼリーを自分で作って朝晩食べ、それを食べ切るや否や新たに1リットルの寒天ゼリーを作って朝晩食べ、休日になれば朝昼晩食べ、たまに祝日とかで3連休があろうものなら朝昼晩朝昼晩朝昼晩食べている。ふつうの食事を抜いているわけではなく、ふつうの食事をとってお腹がふくれたあとに食べている。そんな生活を3ヶ月ほど続けていて、ぼくはたまらなく充実している。

今回のエッセイは、料理下手なぼくがやれている「寒天ゼリーの作り方」をご紹介したい。

と、その前に、少し余談であるが、料理下手なぼくがなぜ寒天ゼリーなどを作っているのか?
それは、尾籠な話で恐縮ですが(←昔からあこがれてたオトナな言い方)、「お通じ」がすごく改善するからである。ぼくは生きてきた約39年間、「お通じ」に悩んだことは一度もなかった。運動をしていてもしていなくても、食物繊維などとってもとらなくても、ヤメルトキモスコヤカナルトキモ、とにもかくにもほとんど毎日「通じ」続けて生きてきた。誰かが「通じ」なくて悩んでる話とか、対処した体験談とか、わざわざ語られる気持ちがわからなかった。そんなぼくが去年の春ころから突然、めっきり「通じ」にくくなったのである。

「通じ」ないのは本当にツライと初めて知った。自分の身体の指先から頭のほうにまできたないものが滞留しているようなイメージが頭から離れず、身体的以上に心理的にツラくてたまらなくなった。
「通じ」にくくなった原因を考えてみたけど、職場で異動があり心身のリズムが変わったからではないか、在宅勤務が増えそれまで以上に運動量が減ったからだなどと分析しているちに3ヶ月たち、夏前には体重が6キロも増えていた。
あまりにも「通じ」ないのでさすがに病気なんじゃないかと心配になって病院に行き、3万円くらいの腸検査をしてもらったけど異常は見当たらなかった。安堵感とともに謎はますます深まったぼくの心を慰めてくれたのが、白いカタマリだった。

医師からもらった薬を飲めば久しぶりにすごく「通じ」て、ぼくはうれしかった。「通じ」る時間帯が毎晩深夜2〜3時というのが玉にキズだったけど、「通じ」る喜び、真夏の陽射し、そしてシンプルな眠気に目を細めながら、「通じ」る日々をぼくは無邪気に楽しんだ。

でも、だんだんぼくは、そんな日々に白々しさを感じるようになっていった。本当のことを言うと、ぼくがそれまで経験してきたあの爽快さはなかったし、うまく言えないけど義務的な「通じ方」だなと思ったよ。だんだん、「通じ」てくれるたびにぼくの心はさみしくなっていったんだ。本当は、本当に「通じ」たいわけでは、ないんだよね? ぼくのために無理して「通じ」てくれてるだけなんだよね?ぼくは、ぼくらはいつまでこれを続けるんだろう?いつかは自分の力で「通じ」ていかなきゃいけないと思った。旅立ちの扉を、ドアを、門を、自分で開いていかなくてはと思った。そんな決意に呼応するかのように、「通じ」る頻度は日に日に減っていった。頬を撫でる夜風のしっぽが秋の冷たさを連れていた。

最後の夜。医師から言われてた容量の1.5倍を飲んで「通じ」ないことを見届けた夜。ぼくは残りのそれを全て薬局の紙袋に詰め込み、ゴミ箱を見下ろし、腕を軽く真上に振り上げて、小引き出しに入れた。小引き出しに、入れた。

その後も結局大した対策もできないままぐだぐだと12月を迎え、相変わらず「通じ」にくい日々を過ごしていた。写真に写る顔の輪郭もなんか前よりまるっとしている。ほんとにちゃんと体質を変えて「通じ」る自力を身に付けないとまずいと思い、年内には日常生活を切り替えようと思った。その後、元日からやろうと思った。その後、仕事が始まったらやろうと思った。

1月下旬。なんとなくAmazonで安い体組成計を購入して測ってみたところ、ぼくの体重はさらに3キロ増えていた。1年前プラス9キロ。さすがにマジで「通じ」なければヤバいと思っぼくはついにジョギングを始めた。朝の気温はマイナス3度。耳も凍るかなり過酷な状況だったけどヤバさが上回り、ぼくは走った。そして身体にいいとされるものを意識的に摂り始めた。オリーブオイル、ミックスナッツ、アーモンド単体、炭酸水箱買い、プルーン、寒天・・・Amazonでさまざまなものを注文し続け、平日家にいて受け取る妻を面倒くさがらせ続けた。

そして約半年。ぼくの身体に徐々に変化が現れ始めたである。ちょっと「通じ」る。ちょっと体重が減る。ぼくは嬉しくて、「何がいちばん効いているのか?」を探った。摂った食品と「お通じ」の連動に注目したところ、ついにぼくは、中でも「寒天」が何より自分に合っていることを発見したのだった。ぼくの身体と反比例するかのように、賀茂川の桜のつぼみが膨らんでいくのを見た。このエッセイの中に”ええ感じ風の季節感”が何度も無駄に盛り込まれるのを見た。

余談が長くなってしまったけど、ぼくは世の中で「お通じ」に悩んでいる人に「寒天がまだなら試して!」と伝えたい。
〈お通じのためには食物繊維〉〈ダイエットにはカロリーや糖質を控えるべし〉というのは定説だと思うけど、なんと寒天は、寒天自体の約8割が食物繊維で、カロリーほぼゼロ、糖質ゼロというものすごい食物なのである。マイナス要素がたぶんほとんどない。寒天すごい!
ネット検索をすると“寒天と何かを組み合わせた美味しいお菓子”が紹介されてたりするけど、美味しくしたいからといって、身体にマイナスなものと組み合わせるのは避けたい。そんな中途半端な寒天を作っている余裕はないし、そもそも料理下手だから小難しいのは無理だ。かなり簡単で、でもそれなりに美味しくなければ続けられない。
そんな高望みを急に抱いてしまったぼくが、いろいろ探求したうえでたどり着いたのが、以下の手順と材料による寒天ゼリー作りなのである。

1.粉末寒天を溶かし入れた水を沸かす

1)水1リットルに、粉末寒天(*1)をコーヒースプーン0.5杯分入れ、固まらないように時々混ぜながら沸かす
2)途中でインスタントコーヒー(コーヒースプーン1杯分)を入れて風味づけ
3)途中でちょっと甘みづけのために、砂糖のようで砂糖でない甘味料(*2)を投入。
4)沸騰してきたら慌てて火を止める

*1:「粉末寒天/(ヘルシーカンパニー)」国内製造・国産で安心感大
*2:「シュガーカット0/(浅田飴)」砂糖のようで砂糖でない、カロリーと糖類がゼロの甘味料。でも甘みはグラノーラでも足すので、なくてもいいかなぁと思い始めている

2.琺瑯の容器に移し入れる

1)妻に「何かいい容器ない?」と訊く
2)妻が「これ使ってみたら」と借してくれる
3)「いいなあ!」と言いながら使う
4)妻から「毎日使うんやったら、自分の買ってな」とビシッと言われる
5)Amazonで妻と全く同じ容器(*3)を注文する
6)「お、届いてたんや」と”置き配”を受け取る
7)沸きたての「1」を流し込んであら熱をとり、冷やして固める

8)「あら熱をとる」という料理上手っぽいフレーズを使う自分にちょっと酔う

*3:「持ち手付きストッカー 角型L/(野田琺瑯)」琺瑯は耐熱性と冷却性に優れ、アツアツで流し込んだ寒天がすぐに冷める。この商品は持ち手があって持ちやすく、ちょうど1リットル分作れる

3.食べる

1)食べやすい器に一定量を盛る。適宜ナイフ等で一口大に切る
2)グラノーラ(*4)をかけてさらに食物繊維と甘み付け
3)アーモンド(*5)もかけてさらに食物繊維と食感アップ
4)ちょっとだけ牛乳もかけて甘みアップ

*4:「ごろっとグラノーラ まるごと大豆 糖質60% オフ/(日清シスコ)」糖質がすごく低いのに美味しいグラノーラ。一般的なグラノーラは意外と糖質が高くて意外と太りやすいとか
*5:「食塩無添加アーモンド/(東洋ナッツ食品)」東洋ナッツのナッツはどれも美味しい

以上です。

これなら、どれだけ料理下手でも作れない人はたぶんいない。材料もWEBでぽろーんと手に入る。にもかかわらず、食物繊維をはじめとする栄養価はかなり高い。これを普段の食事のあと、デザートのように食べている。だいたい4、5日くらいで1リットル分を食べ切ってしまうので琺瑯容器はいつも大忙しだ。

さて、<料理下手な男、琺瑯で寒天ゼリーを固める>などというタイトルで書き始めながら、大半をぼくの便秘談に費やしてしまった。
その中ですごくわかったことは、自分の便秘談って、人に聞いてもらえたらすごく嬉しいということである。

こんなエッセイになってしまったけど、世界に一人でも、ぼくみたいに悩んでる誰かに「通じ」ますように・・・。

4.琺瑯容器に、妻のと区別するシールを貼る

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