告知の通り、今回からトラベルナビゲーターの佑美さんにご協力いただき、佑美さんの生まれ故郷、奄美大島の魅力をシリーズでお伝えしていきます。手軽に海外旅行に行くことが難しくなった今、改めて日本に目を向ける機会にしてみませんか?
大自然が産んだトラベルナビゲーター 佑美のルーツ
奄美大島
生まれ育った奄美大島を離れたのは18歳。都会への憧れや、島を出てもっと広い世界をみたいという思いから東京の大学へ進学し、その後、就職、結婚と18年の時が経ちました。今では、奄美で過ごした時間よりも離れて過ごす年月の方が長くなろうとしています。
出産を機に子供たちと過ごす日々の中で、自身の幼少期を振り返ることが多くなり、故郷(ふるさと)に思いを馳せることが多くなりました。
新型コロナウイルスによって私たちの生活は大きく変わりましたし、これからもまだまだ変わっていくのだと思います。新しい生活様式は(三密を避けること、リモートワークが定着したこと、おうち時間が増え、日々の過ごし方に向き合うことが増えた今)、私たちの価値観をも大きく変えようとしているのではないでしょうか。そして社会全体では、便利で手軽なモノからサスティナブルなものへ移行しようとしています。
そうやって、世界が大きく変わろうとしている今でも、昔からずっと変わらない「大切なもの」がある場所、そして優しく全てを受け入れ、人の心にそっと寄り添ってくれる場所。
そんな故郷を深く知る事で、これからの時代を生きていくヒントが見つかる気がしたのです。外から見た奄美と、内側から見た奄美。両方知っているからこそ伝えられる事があるかもしれない。これから私が大切にしている故郷「奄美大島」を紹介したいと思います。
奄美大島へ
奄美大島は鹿児島県と沖縄県のほぼ中央に位置している離島です。離島へのアクセスは不便なイメージがありますが、東京(羽田)から飛行機で約2時間半。羽田、伊丹、福岡、鹿児島、那覇からはJALグループ、成田、関空からはLCCのピーチが直行便を運行し、鹿児島経由で羽田、中部、神戸からスカイマークが利用できます。航空運賃も時期によってはとても安価で行くことができるため、気軽に行ける島、それが奄美大島です。
奄美への空の旅は道中も楽しめます。鹿児島を過ぎたあたりの上空では、機内の窓からは青く広い海原にポツポツと小さな島々が見えてきます。これは鹿児島と奄美大島の間には吐噶喇(トカラ)列島の小さな島々が点在しているので、奄美大島へのカウントダウンの始まりです。
機内で地図を広げながら窓の外の景色を見ていると、今どの辺りを飛んでいるのか、次に見えてくる島は何という島なのか、CAさんや機長さんが機内アナウンスで案内してくれることもあり、旅がより楽しめます。
奄美に近づくにつれ、海の色は深い青から美しいエメラルドグリーンへと変化していきます。そして、奄美空港へ着陸する際に美しいビーチが眼下に迫ってくる様は、何度みていても心が躍る瞬間です。
空港へ降り立つとあたたかい南風と島唄が出迎えてくれ、この瞬間から穏やかな”島時間”が始まります。
ここでしか出会えない奄美大島の自然
島の面積の多くは亜熱帯の森が占めており、日本で2番目に広いマングローブ林もあります。一年を通して雨が多い島ですが、この高温多湿の気候が豊かな森を作っています。
冬場は特に雨が多く、1日の中で天気がコロコロ変わりますが、雨が降った後には深い緑の山々に霧がかかりとても幻想的です。
12〜2月ごろの日照時間は短いですが、冬場でも平均気温が14〜20度なのでとても過ごしやすい気候です。
奄美特有の暖かい気候を求めて、ザトウクジラが島の海へと繁殖のために訪れ、例年12〜4月はホエールウォッチングが楽しめます。
1月下旬には本土より一足早く桜が咲きます。奄美の桜は本土の桜ソメイヨシノとは種類が異なり「緋寒桜(ヒカンザクラ)」という種類で、濃いピンクの花がぶら下がるように下向きに咲きます。2月ごろになるとこの緋寒桜が満開になり、山の中に濃いピンク色の道ができ、お花見をする人々で賑わいます。
3〜4月は晴天に恵まれることが多く、山々が新緑の鮮やかなグリーンで彩られ、太陽に照らされた木々が光輝き、この時期の島は一年で一番生命力に溢れています。奄美の森には、生きた化石と言われるヒカゲヘゴなどの亜熱帯特有の植物や、太古から形を変えずに生き抜いてきたアマミノクロウサギ(特別天然記念物)など、奄美大島でしか出会うことのできない動植物がたくさん生息しており、太古の息吹が感じられる原生林は、まるで恐竜がいる時代にタイムスリップしたような気分を味わえます。
5〜8月には、ほのかに甘い香りを放ちながら、たった一夜しか咲かない幻の花”サガリバナ”も見ることができます。はかなくも繊細な花は「幸運が訪れる」という花言葉で、マングローブ林の水面に浮く様は、早朝に一見する価値ありです。
昔から奄美は「自然全てが神様」という自然崇拝の島であるため、必要以上に自然に踏み入らず「人は自然に生かされ、自然の一部」という理念のもと、自然と共存してきました。そのため、現在までこのような豊かな自然が守られてきたのです。
手つかずの自然の中で、独自の進化を遂げた固有種が多く「東洋のガラパゴス」と称され、2017年3月には奄美群島全域が国立公園に指定されました。そして現在、沖縄県北部、西表島とともに世界自然遺産への登録を目指しています。
※世界自然遺産推薦地となっている金作原(きんさくばる)原生林では近年来訪者が増加していることに伴い、散策する際は認定ガイドの同行が必要となっています。
例年ゴールデンウィーク明けごろから梅雨入りし、6月下旬ごろには梅雨が明け、ここから本格的な夏が始まり観光客で一番賑わう時期となります。島全体が美しいサンゴ礁に囲まれ、青く透明度の高い海は「奄美ブルー」と言われており、島内のどの市町村でも美しい砂浜のビーチが楽しめます。海の中を覗いてみると、浅瀬でも南国特有のカラフルな魚やサンゴ礁を観ることができ、誰でも手軽にシュノーケリングや様々なマリンスポーツを楽しめます。しかし「台風銀座」とも言われる奄美大島。台風の到来が多いのもこの時期になりますので、来島する際の気象情報の確認はしっかり行ってください。
そして実りの秋、奄美の森は紅葉はしないものの9〜11月は島の至る所で伝統行事が盛んになり、一味違った魅力が楽しめます。五穀豊穣を祝い自然に感謝を捧げ、次の年の豊作へ願いを込め、奄美の各集落で豊年祭・豊年相撲・八月踊りなどが行われます。この時期は島の各地でチヂン太鼓と三味線の音色が響き、島に生きる人々の力強さや島の鼓動を感じる事ができます。特に国の重要無形民俗文化財ともなっている秋名の「アラセツ行事」や加計呂麻島の「諸鈍シバヤ」は一見の価値があります。
奄美大島というと夏や美しいビーチが注目されがちですが、このように夏だけではなく1年を通してたくさんの魅力が詰まっており、訪れる度に新しい発見がたくさんあります。
後半に続く(https://blatra.com/trip/1860/2021amami-vol01-2私の愛する故郷「奄美大島」古から未来へ、想い紡ぐ結の島<後編>)
文:佑美 イラスト:Yu Ikari
<後編>は下記リンクから
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