人と人との「結(ゆい)」の精神
島内観光にはレンタカーがオススメです。奄美大島は、日本で5番目に大きな離島であり、島内を一周しようと思うと2日ほどはかかります。
島内をドライブしていると、たまにものすごくゆっくり車を走らせているおじいちゃんやおばあちゃんが短い渋滞を作っていますがそれもご愛嬌。のんびりした島ならではの光景ですので、クスッと笑みがこぼれます。こんな時でも、誰も煽ったり急かしたりする人はいません。島人(しまんちゅ)は穏やかで親切な人が多く、自分の地元「奄美」に誇りを持っており、島を訪れる全ての人を温かく迎え入れてくれます。
観光などで分からないことがあったら、島人に声をかけてみてください。きっと親切に奄美のことをいろいろ教えてくれるはずです。また子供を連れていると、どこへ行っても優しく声をかけてくれ、島の人たちみんなで子供を大事にしているのが伝わってきます。子宝の島と言われる所以もわかっていただける気がします。
島人たちは奄美全体をさして「島」とも言いますが、自分が生まれ育った集落のことも「シマ」と呼び、自分のルーツをとても大切にしています。小さな集落の中で人と人の繋がりがとても強く、「シマ」によって方言が少し違ったり、秋に行われる豊年祭などはその地域の特色が色濃く出ます。
奄美の人々はこのように、遠い昔から「シマ」単位で人と人との繋がりを大切にし、お互いを助け合う「結(ゆい)」の精神を受け継いできました。
人々が脈々と大切にしてきた文化奄美の文化
鹿児島と沖縄の中間ということもあり、伝統行事、方言や食文化など琉球文化の影響を色濃く受けながらも本土の文化も入り込んでいます。特に方言などは沖縄と共通するものも多くあります。
しかし、沖縄と違い奄美の島唄の旋律は、どこか悲しく切ない雰囲気を感じます。現在の穏やかな島の姿からは想像できない、悲しく壮絶な歴史があるからです。本土と琉球の狭間で歴史に翻弄されながらも、数々の困難を「結(ゆい)」の精神で乗り越えてきた奄美の先人たち。自然を敬い、自然と共生しながら独自の文化を築いてきました。
このような先人たちがいたからこそ、今の自分たちが存在していると先祖を敬うことを奄美の人たちは現在でもとても大切にしており、先祖に感謝を捧げる伝統行事なども残っています。伝統といえば、伝統工芸である「大島紬(おおしまつむぎ)」は、奄美の先人たちが豊かな自然を活かしながら現在まで引き継がれてきたものです。
この大島紬は世界三大織物のひとつとも言われており、約1300年もの歴史があります。その長い歴史と伝統には、いま世界で注目されている「サスティナブル」とも通じるものがあります。
奄美の人たちが、先人たちの想いや知恵を紡ぎながら現在まで大切にしてきた「大島紬」とはどういう物なのか、次回はこの「大島紬」を紹介します。
文:佑美 イラスト:Yu Ikari
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