関東「住みたい街ランキング」で常に上位にランクインする、恵比寿。その一方、有名レストランがひしめき、「飲食店のメッカ」とも言われるほど。今宵も恵比寿では、美食家たちが舌をうならせています。
そんな恵比寿の一角、恵比寿駅からほど近くの路地裏に、一軒のスパニッシュ・イタリアンバルがあるのをご存知でしょうか。
商売の神様で有名な恵比寿神社のすぐそば、街の喧騒からはなれてひっそりと佇むそのお店の名は、「Baru Comodo」(バルコモド)。「Comodo」とは、スペイン語で「心地いい」という意味。ほの暗い路地とは対照的な優しい灯りにいざなわれて店内に入ると、そこにはほっと一息つける心地よい空間があります。
他と一線を画す圧倒的なライブ感
初めて来店したときのことは忘れられません。ひとりカウンター奥の席に腰かけ、サラダとアヒージョを肴にワインをなめながら、店内の隅々まで広がる胸が踊るようなライブ感に酔いしれていました。
カウンター越しには迫力のある調理風景が広がり、コンパクトな店内を横断する満席のカウンターでは多くの客が肩を寄せ合い談笑している。でも窮屈さはなく、すべてが程よいバランスをとっている。まるで、シェフが中心のBaru Comodoというバンドのライブ会場にいるような、不思議な一体感に包まれていました。「いつまでもこの空気にひたっていたい」と、強く思ったのを鮮明に覚えています。
この“ライブ感”を演出しているのは、なんと言っても客席とキッチンの距離の近さです。通常、オープンキッチンかつカウンターメインの飲食店では、キッチンとカウンターとの間に高さのある仕切りがあるもの。しかし、Baru Comodoにはそういった仕切りがなく、カウンターとキッチンが完全にフラット。シェフの表情から手元まで、すべてを眺めることがことができるのです。この珍しいカウンターの造りが、圧倒的なライブ感の仕掛け役であることは間違いありません。
どうやってこの造りを思いついたのか、オーナーの大賀氏にうかがったところ、かえってきた返事は意外なものでした。
「これ、実は間違えちゃったんです(笑)。本当は他のお店みたいに、仕切りをつけたかったんです。そうじゃないと、お客さんに見られたくないものまで、全部見えちゃうので…。」
なんと開店前、キッチンとカウンターの間に仕切りをつけ忘れてしまったのだとか。そんなハプニングが今ではお店の個性を形づくっているとは、なんともほっこりするエピソード。ピンチをチャンスに変える柔軟性が、Baru Comodoの心地よさにつながっているのかもしれません。このエピソードからもわかるように、大賀氏はとても親しみやすいキャラクターの持ち主。彼との会話を楽しみにお店を訪れるゲストもいるほどです。
目指すのは“ちょっと美味しいお店”
そんな大賀氏の飲食キャリアは、“カラオケレストラン”でスタートしました。「カラオケって、お客さんの滞在時間があらかじめ決まっているじゃないですか。たいてい1時間で、料理や飲み物はオーダーから10分以内に提供しないといけないんです。」と大賀氏。その時の経験で、飲食店でのオペレーションに対する考え方が洗練されたと言います。その後、飲食業界では知らない人がいないと言われる有名レストランを渡り歩いて独立。Baru Comodoを立ち上げました。
これまでの経験から、大賀氏はひとつの大切にしたい想いにたどりつきます。それは「自分の店を街の資産にしていきたい」というもの。これは、大賀氏の前職であるレストラン運営会社が経営理念に掲げる価値観です。これに共感した大賀氏は独立後もその想いを胸に、Baru Comodoを美食の街、恵比寿の資産にするべく試行錯誤をしています。
「Baru Comodoは“ちょっと美味しいお店”であり続けたいと思っています。僕が考える“ちょっと美味しいお店”とは、“気取る必要のないお店”という意味。ご新規さんも常連さんも、みんなが気軽にカジュアルに心地よくすごせるお店であり続けたいんです。もちろん『すごく美味しい!』って言ってもらえるように努力していますけどね。」と、大賀氏は笑顔で語ってくれました。
街の資産になるとはつまり、恵比寿に集まる誰もがいつでも一息つけるお店であること。これが、大賀氏の強いこだわりです。
「柔軟性」+「こだわり」=「Comodoな空間」
もう一つ、大賀氏には強いこだわりがあります。それは、Baru Comodoを常に進化し続けるお店にするということ。
「今は自分もお店に出ています。しかし将来的には若いスタッフに任せていこうと考えています。そのために若手を育てていきたい。自分とは違う感性を持っている人が生き生きと働ければ、お店はどんどんいい方向に進化していきますから。それによって、来てくれるお客さんの心地よさもどんどんあがっていくと思うんです。例えば、シェフが変われば料理のアレンジも変わります。それがお客さんにとっていい変化なのであれば、どんどん受け入れていきたいです。これもシェフの創意工夫で、昔より魚が柔らかくなったんですよ。」そう言いながら、アクアパッツァをさしだした大賀氏。ひと口食べて、その言葉に強くうなずきました。
“ちょっと美味しいお店”であり続けることにこだわる。そして、進化し続けることにこだわる。でも堅苦しい雰囲気は一切なし。うっかりハプニングによりフラットになったカウンターで大賀氏の話を聞いていると、「柔軟性」と「こだわり」の絶妙なバランスが、Baru Comodoの心地よさ…「Comodoな空間」を作り出しているのだとわかります。
味わうべき絶品メニュー
Baru Comodoのメニューには絶品料理がずらり。メニューは大賀氏とシェフで相談しながら考えているとのことですが、シェフのアイディアをできる限り尊重しているそう。ライブ感あふれるフラットデザインのカウンターで日々ゲストと対面しているからこそ、ゲストの期待を超える数々の料理を生み出し続けることができるのでしょう。
中でも特に味わうべきは、なんと言っても炭火焼きの肉料理。徳島県で生産される黒毛和種の阿波牛、エゾ鹿、ラムチョップ、ホロホロ鳥など、炭火で絶妙に火入れされた柔らかい肉が、食通の舌をうならせます。バイザグラスでオーダー可能なBaru Comodoセレクトの赤ワインともベストマッチ。ここに来て肉を食べないなんてもったいない、そう言いたくなるほどの絶品メニューです。
一方、白ワイン派には魚料理もおすすめ。函館直送の新鮮な魚介を使ったメニューをご賞味あれ。スパークリングにはカルパッチョを、香り豊かな白ワインには、舌の上でほろほろとほどけるほど柔らかい鮮魚のアクアパッツァを。
個人的に毎回必ずオーダーするのは、スペインオムレツ。Baru Comodoのスペインオムレツは日本一!ふわふわあつあつで、卵の香ばしい香りが食欲をそそるオムレツに、オリジナルのアイオリソースをつけていただきます。一度食べたら忘れられない、幸せな味。どんなに疲れていても、Baru Comodoのスペインオムレツを口にふくめば、自然と顔がほころびます。
ワイン以外のドリンクも充実していますが、中でも注目したいのはモスコミュール。ウォッカとジンジャーエールのシンプルなカクテルですが、Baru Comodoではあらかじめウォッカに生姜をつけこむなど、オリジナルレシピで提供しています。「前職時代に考えた作り方なんです。某レストランで提供されているモスコミュールのレシピは、僕が考えたんですよ。」と大賀氏。モスコミュールの印象を一変させる味わいは、刺激的なのにさっぱりしていて、とても飲みやすい逸品です。
恵比寿に集まるすべての人へ
スパニッシュ・イタリアンを掲げるBaru Comodo、ただのイタリア料理とどう違うのか聞いてみたところ、大賀氏はこうこたえました。
「イタリア料理は大皿で出す料理が多いんです。パスタとかピザとか。それをみんなでシェアするのもいいのですが、いろんな料理をちょっとずつ味わえた方が楽しいじゃないですか。だからうちは、スペインの小皿料理スタイルを取り入れているんです。だから、スパニッシュ・イタリアン。」
目線はあくまで、「お客さんが楽しめるかどうか」。恵比寿に集まるすべての人が、気軽に立ち寄れて楽しく酔える、そんな“ちょっと美味しい”街のお店、Baru Comodoに、今宵も集ってみませんか?
Baru Comodo (バルコモド)
東京都渋谷区恵比寿西1-14-6 萩原ビル第6 1F
JR恵比寿駅西口より徒歩4分
日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩3分
予約・お問い合わせ:03-6455-0400
営業時間
月〜木 11:30〜15:30 (L.O. 15:00) / 17:30〜23:30 (L.O. 23:00)
金 11:30〜15:30(L.O.15:00) / 17:30〜2:00
土 17:30〜2:00
日 17:30〜22:00
※新型コロナウイルス 感染拡大に伴い、4月6日から当面の間、11:30〜18:00 のお弁当及びテイクアウトメニューのみの営業になります。営業時間については店舗にご確認だくさい。なお、編集部でも情報が分かり次第、営業時間などの情報は都度変更いたします。
文:吉田すだち 写真:Makoto Shikuya(Fede)
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