奄美の新年は三献(サンゴン)から始まる
元旦の朝はしっかりと身支度をして、家族で「三献(サンゴン)」を食べる事から新年が始まります。
三献とは「三つの膳」で構成された正月料理です。
「一の膳」はお餅の入っている鰹出汁のお吸い物で、一の膳の具材は奇数になるよう七種類の具材を入れます。「ニの膳」は白身魚のお刺身を二切れと薄切りショウガを盛り付けたもの、「三の膳」は鶏肉か豚肉を使った肉のお吸い物です。このように、お吸い物が二種類とお刺身のお膳の三つで構成されています。
三献は並べ方にもルールがあります。「一の膳」のお餅のお吸い物は赤いお椀に入れ右側、「三の膳」の肉のお吸い物は黒いお椀に入れ左側、「ニの膳」のお刺身のお膳は二つのお吸い物の間へ配置します。
食べ方にも決まりがあり一の膳から順番に食べ進めていくのですが、一つの膳を食べ終わるたびに一献(一杯)のお屠蘇を飲みます。合計三献(三杯)のお屠蘇を頂くのが三献の特徴でもあり、名前の由来になったとも言われています。お酒が飲めない人や子供は杯に唇をつけて飲む真似をします。私はお酒が飲めないのでいつも飲む真似をしています。
一般的にはお屠蘇は日本酒ですが、奄美では黒糖焼酎を飲みます。今回この記事を書くまでお屠蘇が黒糖焼酎ということは当たり前なことだと思っていたのですが、奄美独特の文化だと知り驚きました。
これが一般的な三献のスタイルですが、お吸い物の具材やお刺身の種類・食べ方なども地域によって少しずつ違い、独自のやり方が代々伝わっています。
我が家の三献も一般的なスタイルですが、母が生魚が苦手なので二の膳のお刺身はタコやイカを使うことが多く、三の膳のお肉のお吸い物はいつも鶏肉のお吸い物を食べます。
三献はもともと武家儀礼が反映された料理として伝わったと考えられています。現在は冠婚葬祭などの特別な場で行われるのみになっており一般的にはあまり馴染みがないのですが、奄美では正月に食べられる料理として今もしっかりと根付いています。お正月だけではなく卒業や入学・結納や結婚式などおめでたい席で出され、私の結納の際にも三献を食べました。
実家でのお正月はダラダラと過ごしがちですが、三献を食べる時間は父の新年の挨拶から始まり、ちょっとしたお祝い事のような程よい緊張感が漂い「新しい一年がまた始まるんだ!」と気持ちが引き締まります。三献を食べないとお正月を迎えた気持ちにならないぐらい、島人にとってとても大事なお正月の風習です。
明日は奄美の門松についてお届けします。
文:佑美 イラスト:Yu Ikari
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