梅雨が近づき全国的にジメジメとした気候になってきましたね。ジメジメとした気候が続くと、身体がだるくなったり体調を崩しがちです。
そんな時、島人たちがよく食べるのが“元気を出すためのスープ!!”
奄美には“臭いにビックリ”、“見た目もビックリ”、“食べてビックリ”なクセの強い美味しいスープがたくさんあります。今回はその中でも島人がよく食べるものを紹介したいと思います。
クセが強い!!「山羊汁(やぎじる)」
奄美ではヤギを個人の畑などで飼う人も多く、島の至る所でヤギを見かけます。ヤギは奄美の方言で「ヒンジャー」と呼ばれ、島人の生活には昔から欠かせない存在です。沖縄から奄美のエリアではヤギ料理を食べる文化があります。ですから、島の肉屋や地元に密着したスーパーにはヤギ肉を売っているお店もあるんですよ。
旧暦6月頃のヤギを「ロッカツ(6月)ヒンジャー」と呼び、この時期のヤギは若草を食べているので特に味がいいとされています。そして夏が本格的に始まるこの時期に山羊汁を食べて酷暑を乗り切っていたそうです。
しかし、この「山羊汁」はとてもクセが強いため、島人でも好き嫌いがはっきり別れる料理だと思います。ワイルドな臭いが次の日まで残ることもあるとかないとか…。
ラム肉やブルーチーズなどのクセがある食べ物が好きな人にはたまらない料理かもしれません。島ではお祝い事で人が集まった時に山羊汁がよく振る舞われます。
山羊汁は“塩”と”味噌”の二種類の味があります。初めて食べる人や臭いが苦手な人は“味噌”、逆にクセの強いものが好きな人は“塩”の方が美味しく食べられると思います。
食べると美味しい山羊汁ですが、美味しくても冷たいビールと一緒に食べるのはやめた方がいいです!
冷たいものと一緒に食べると、胃の中で山羊の脂が固まって腹痛を起こすと言われているので注意が必要です。
※昔からの言い伝えみたいなものなので科学的な根拠はわかりません…
また「山羊肉は血圧を上げる」といわれ、高血圧の人は食べる時に気をつけなさいと言われてきましたが、近年では山羊肉が血圧を上げるのではなく山羊汁の塩分が血圧を上げていたことが分かったそうです。
山羊汁のパワー
山羊汁は低カロリーなのに高タンパクでヘルシーなスープです。鉄分や亜鉛といったミネラル分やタウリンが豊富に含まれているため、肝臓の解毒能力を強化し疲労回復効果も期待できます。
昔から「山羊汁」は滋養強壮として食べられており「クスリ」とも言われていたそうですが、調べてみると実際に栄養素が豊富で理にかなっており「クスリ」と言われているのも納得でした!
私は奄美出身ですが、実を言うと山羊汁を食べたことがありません。
元々クセが強いものが得意ではないので食べようと思ったことがないのも理由の一つなんですが、母も山羊汁が苦手なので、食卓で出ることもなく今まで30数年…。いつか挑戦してみたいと思います。
最近では山羊汁のレトルトパックもあり、奄美のお土産や特産品を販売しているオンラインサイトで購入できるので家にいながら奄美の味を楽しめます。奄美の居酒屋では山羊汁を出しているお店が多くあるので、クセもの好きの方はぜひ挑戦してみてくださいね!
我が家では定番の「シシ汁(ししじる)」
前述したように人が集まると山羊汁を振る舞って食べる家庭の方が多いかもしれませんが、我が家の場合、父方の実家で親族が集まる時はシシ汁(イノシシのスープ)を食べることが多かったです。
父の祖父が「ししぼんおじ」と呼ばれるほど猪狩りの名手だったこともあり、猪狩りをする親戚が多くいました。そのため私は山羊汁よりもシシ汁の方が馴染み深く、よく食べていました。父方の祖母が生姜をたっぷりと入れた塩味のスープを作ってくれ、冬場に食べると体がポカポカしたのを覚えています。
猪は肉質が硬いので、子供の頃はシシ汁の肉は食べずにスープだけ飲んでいたのですがスープだけでも体がポカポカとあったまります。
奄美で食べられるイノシシは「リュウキュウイノシシ」という種類で、本土のイノシシよりも小型でずんぐりしています。畑を荒らすので駆除対象になっていますが、島人にとっては昔から大事なご馳走の一つです。
シシ肉も獣のような臭いはあるのですが、ヤギよりはクセは強くないので初めての人でも食べやすいかと思います。豚がワイルドになったような臭いがします。
奄美の居酒屋では山羊汁と同様にシシ汁も郷土料理のメニューとして食べれますが、シシ肉の塩焼きなど焼いた肉の方がクセが少なくより食べやすいかもしれません。シシ肉の焼肉もとても美味しく、クセのあるものが苦手な私でも美味しく食べられるオススメ料理です。
真っ黒な魅惑のスープ「マダ汁(まだじる)」
奄美の方言で「マダ」とは「イカ墨」のことをさしますので、「マダ汁(まだじる)」とはイカ墨のスープです。真っ黒な見た目のこのスープを初めて見た人はビックリするかもしれません。
祖父がよくイカ釣りに行っていたので、イカが釣れた時はお刺身などと一緒にマダ汁を食べていました。
弟は小さい頃からこのマダ汁が大好きで、よく口の周りを真っ黒にしながら食べていまたした。私はと言うと、この真っ黒な見た目がどうにも苦手で、子供の頃は食わず嫌いをしていました。中学生の頃にマダ汁がとっても美味しいことに気づいて、「なんでもっと早く食べなかったんだろう。今までもったいないことした!!」と後悔したことを覚えています。
マダ汁はその見た目とは裏腹に、旨味がギュッと濃縮されていて本当にとても美味しいんです。
祖父との思い出の味
奄美では年中イカ釣りを楽しむことができるのですが夏〜秋にかけては小さい子供のイカが、冬〜春にかけては大きなイカが釣れるそうです。
奄美の山々に百合の花が咲く頃(4月〜5月ごろ)になるとイカが産卵のために岸の方に寄ってくるため釣れやすくなると言われており、この時期になると祖父は毎年よくイカ釣りに行っていました。そしてイカを釣ってくる度に母がマダ汁を作り、祖父がこれこれ!と言わんばかりに嬉しそうな顔でマダ汁を食べていた姿を思い出します。
マダ汁に使う墨は「水イカ(アオリイカ)」のイカ墨が臭みがなく美味しいそうです。我が家のマダ汁には豚肉を入れます。豚肉の脂がマダ汁のコクをさらに深めてくれて美味しくなるんです。このレシピは祖父が母に教えてくれたのだそう。豚肉がない時はオリーブオイルを少し加えると豚肉と似たようなコクが出るそうですよ!ぜひ試してみてくださいね。
祖父は料理は全くしない人だったのですが、このマダ汁の味に関しては大好きな分こだわっていたのだろうなぁと思います。この話をマダ汁の記事を書くのがきっかけで母から初めて教えてもらい、私の好きなマダ汁の味は祖父の味なんだ!ととても嬉しくなりました。
ただこのマダ汁、食べ過ぎには気をつけてください。マダ汁は奄美では「ワタサレ(腸の掃除)」と言われ、腸をきれいにしてくれる料理として食べられてきたので食べすぎるとお腹を壊してしまうかもしれません。美味しくてもほどほどに食べてくださいね。
また、マダ汁を食べたあとは口の周りが黒くなったり、笑うとお歯黒のようになったりするのでデートで食べるのもやめておいた方がいいかもしれないですね…
このマダ汁もシシ汁・山羊汁と同じように滋養強壮や薬として食べられており、お産の後に食べると良いとも言われてきました。栄養成分も調べてみると山羊汁と同じように肝機能を高めるタウリンなどが豊富に含まれており、更にはイカ墨に含まれる「ペプチドグリカン」という成分が免疫力を高め、ガン細胞の増殖を抑える効果なども発見されています。
マダ汁もレトルトパックがあり、オンラインサイトで購入ができるのでお家で味わうことができます。最近ではYouTubeなどで検索するとマダ汁の作り方なども公開されているので、新鮮な水イカが手に入った時に挑戦してみるのもいいかもしれないですね!
昔の島人たちは栄養成分など分からなかったはずなのに、これらの食材を遥か昔から薬や滋養強壮として食べていたという事に本当に驚きます。山や海の神様に祈り、生き物の命を大切にいただいて感謝しながら伝統を守り続けてきたのだと思います。
この料理たちは現在でも島人のパワーの源となっています。クセの強い料理ですが栄養もパワーもギュギュッと詰まっている奄美の珍しいスープ。これらを食べて本格的に始まる暑い夏を乗り切りたいですね!
山羊汁・マダ汁が購入できるサイト
奄美産直いっちば
〒894-0068 鹿児島県奄美市名瀬浦上町48-1-2F
営業時間:9:00-17:00(土・日・祝休)
TEL:0997-69-4681
http://icchiba.com
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