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震災復興プロジェクトが産んだ夏を彩るスパークリングワイン(南三陸ワイナリー「デラウェアスパークリング」

スイカや桃、さくらんぼなど、夏に旬をむかえる果物はたくさんありますが、“デラウェア”もその一つ。どのスーパーでも売られている、日本人にとって馴染み深い小粒のぶどうです。

一般的には“食べるフルーツ”として販売されているデラウェアですが、ワインの原料としても使われるのをご存知でしょうか。甘口や辛口など、様々なスタイルのワインに化ける万能品種と言われています。特にスパークリングワインは、日本の夏にぴったりな味わいです。そんなデラウェアのスパークリングのワインのうち、この夏注目の1本をご紹介します。

南三陸ワイナリー DELAWARE SPARKLING 2019

ガラス瓶に透ける涼しげなシャンパンゴールドカラー、シュワシュワと心地よくはじける泡、柑橘系のフレッシュな香り、そしてクセになるシャープな酸味。口に含めば、夏の暑さが吹き飛ぶ爽快感を味わえます。その名も「DELAWARE SPARKLING(デラウェアスパークリング)2019」、造り手は宮城県にある南三陸ワイナリーです。

何を隠そうこのワイン、ただの美味しいワインではありません。実は2011年に発生した東日本大震災により甚大な被害を受けた町のひとつ、宮城県南三陸町の復興プロジェクトから生まれた1本です。

ワインをハブとした産業振興プロジェクト

震災後、南三陸では人口が減って住民の高齢化が加速。地元産業の担い手不足が深刻になり、産業復興の足かせとなってきました。また、津波により大きな被害を受けた町の中心地には、震災後も住居や宿泊施設が再建されることはなく、より過疎化が進んでしまったといいます。こうした状況を変え、町にかつての活気を取り戻すために発足されたのが「南三陸ワインプロジェクト」です。

プロジェクトの目的は「ワイナリーをハブとして、他の様々な地元産業と連携しつつ産業振興を行う」ことです。例えば、南三陸の昔からの特産品である牡蠣やタコ、ホヤなどの豊かな海の幸とワインをかけあわせて新しい楽しみ方を提案したり、ワイナリー見学やぶどう畑での農業体験といった“ワイン・ツーリズム”で人を呼び込んだり。

ワイナリーの代表、佐々木さんはこう言います。「町を盛り上げるため、新しい産業を増やしていきたい強い思いがあります。そのひとつとして、ワイナリー建設を進めてきました。新しい産業は新しい雇用も生み出し、町の発展に貢献できると考えています。」

宮城のワイン造りの歴史を刻む、新興ワイナリー

震災の影響で、宮城県では一度全てのワイナリーがなくなってしまいました。もとからワイン造りが盛んな地域ではありませんが、さらに追い討ちをかけるようにリセットされてしまったのです。南三陸ワインプロジェクトは、文字通りゼロからのスタートとなりました。

栽培醸造責任者の正司さんは次のように語ります。「宮城県では、ぶどう栽培やワイン醸造に関するデータがほとんどそろっていない状況です。どんな品種のぶどうが育つのか、どのように醸造すると美味しいワインができるのか、全てにおいて試行錯誤の連続です。」

南三陸産のワイン造りは3つのステップを踏みながら進んでいます。ステップ1は「他地域から買い付けたぶどうを使って委託醸造する」こと。ステップ2は「他地域から買い付けたぶどうを使って南三陸で醸造する」こと。ステップ3は「南三陸で収穫したぶどうを使って南三陸で醸造する」こと。ぶどうの栽培には時間がかかるうえ、ゼロから手探りで進めている状況のため、現在販売されているワインはまだステップ1のものです。

「実は昨年、南三陸で育ったぶどう(品種はシャルドネ)でワインを造ったのですが、害虫や動物による被害で収穫量が少なく、一般向けに販売することはできませんでした。ぶどう栽培の難しさを痛感した出来事です。その反省をいかして取り組んだ結果、今年は順調に育っています。うまくいけば、来年頭には南三陸産のぶどうを使ったワインを皆さまにお届けできるかもしれません。」と、正司さん。

栽培しているぶどうの品種は、シャルドネやソーヴィニヨンブランなどの有名品種から、アルバリーニョやビジュノワールといったワイン通でなければ聞き馴染みのない品種まで。宮城のワイン造りはまだ始まったばかり、実験の連続です。

正司さんは目を輝かせながらこう付け加えました。「かつて中央アジアからぶどうを持ち込まれたフランスは、その後世界一のワイン銘醸地に成長しました。私たちも同様に、南三陸をゼロからワイン銘醸地に育てる気持ちで取り組んでいます。」

海の町、南三陸ならではの“海中熟成”

「今年の2月に、南三陸の志津川湾にワインを沈めました。海の中では、ワインの熟成が3倍早く進むと言われています。」と佐々木さん。ワインを海に沈めて熟成させる“海中熟成”は、水産業が盛んな南三陸ならではの手法と言えます。海中熟成させたワインを同じ海で獲れた魚介とともにいただく、そんな贅沢を味わうことができるからです。

本来、海中熟成は長期熟成に適するぶどう品種のワインに用いられる手法です。一方、南三陸ワイナリーのワインはフレッシュさが売り。それなのになぜこの手法を試しているのか伺うと、正司さんはこう答えてくれました。「一見矛盾しているようですが、これも実験のひとつです。美味しく味わっていただくために、うちのワインは1年以内に飲んでいただくことを推奨していますが、試しに2年前のワインを今飲んでみるとフレッシュさとは別の味わいに変化していて、思わぬポテンシャルを感じています。海中熟成を行うと、これがどこまで変化するのか。結果が楽しみで仕方ありません。」

2月に沈めたワインは9月末〜10月ごろに引き上げる予定とのこと。今回は数に限りがあるので一般販売は行いませんが、将来的にはより大々的にイベント化することも視野に入れているそうです。佐々木さんによると「少し大きめの船で、海中熟成ワインと一緒に養殖牡蠣も引き揚げ、洋上で一緒に楽しむワイン会をやってみたいです。絶対楽しいじゃないですか。」

“酸”と“泡”にこだわった上質スパークリング

そんな南三陸ワイナリーが手がける夏にぴったりの1本が「DELAWARE SPARKLING(デラウェアスパークリング)2019」です。昨年2019年から販売がスタートした、デビューしたての銘柄です。

「スパークリングワインを造るとなった際、酸と泡にこだわると決めました。スパークリングワインを飲むシーンや南三陸の海産物とのマリアージュを考えると、シャープな酸は絶対に必要です。また、上質なスパークリングワインに欠かせないのがきめ細やかな泡。炭酸の弾ける感じが苦手な人でも心地よく感じるような、味わいのアクセントになるきれいな泡を目指しました。」と正司さん。

こだわりの酸と泡を表現するために、フランスのシャンパーニュ(シャンパン)と同じ製法(瓶内二次発酵)を採用しています。瓶内二次発酵は非常に手間のかかる製法です。まずは非発泡のワインを造り、それを酵母、糖分とともに瓶詰めします。すると瓶の中で再び発酵が始まり、発酵の過程で発生した二酸化炭素がワイン中に溶け込んでシュワシュワとした泡になるのです。

正司さんはこう続けます。「デラウェアには特有の香りがあり好みがわかれるため、あまり主張しすぎないように気をつけています。かといってなくしてしまうと個性がなくなってしまうので、バランスよく調整するのに苦労しました。」あわせる料理の邪魔をしない、絶妙な香りです。

デラウェアスパークリングに合わせるなら、やっぱり南三陸産の海の幸がおすすめ。佐々木さんいわく「このワインは酸がしっかりしていて、レモンをキュッと絞ると美味しい魚介との相性が◎です。」

南三陸ワイナリーでは、牡蠣とタコの燻製おつまみがついたマリアージュセットの販売も行っています。こちらは贈り物にも最適。新型コロナウイルスの影響でなかなか会うことのできない遠方の家族や親戚、友人に、暑中見舞いとして贈るのも素敵ですね。わが家も実家の両親にマリアージュセットをプレゼントしました。

ALL南三陸の想い

実は今まで他のワイナリー協力のもと、ワインを委託醸造していた南三陸ワイナリーですが、今年2020年の9月末に待望の自社施設がオープンする予定です。場所は漁港のほど近く、海の見える町の中心地。震災後に建てたれたプレハブの水産加工場を譲り受け、ワイナリーとして改修しました。オープン後はワイナリー見学やワイン会イベント、海中熟成ワインと海産物のコラボイベントなど、様々な企画を考えているそうです。

「ただ美味しいワインを造ることだけが目的ではありません。地域の食材とワインをつなげて多くの人に楽しんでもらって、それによってさらにたくさんの人を呼び込んで人と町がつながって、南三陸全体が一体となって盛り上がっていくような、そんな産業振興のハブになることが私たちの目指す姿です」と佐々木さん。

デラウェアスパークリングを食卓にプラスして美味しさを味わいながら、いつか南三陸に出かける日を想像して楽しんでみてはいかがでしょうか。

ワイナリー紹介

南三陸産食材とワインとのマリアージュにより、南三陸町に新たな食産業と賑わいの創出を目指し、2017年春に「南三陸ワインプロジェクト」がスタートしました。町内の遊休地を活用したぶどう栽培を進め、2018年より仙台秋保醸造所にて委託醸造を開始。2020年9月に南三陸町で海の見えるワイナリーの設立を目指しています。