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夏の食卓に並べたい日本のロゼワイン(ドメーヌヒデ「しろしろピンク」)

今年は例年よりも夏の始まりが遅く、一部では冷夏になるという予想も出ています。しかし、ここにきてようやく気温が上がり、夏を実感する瞬間が増えてきました。暑い日が続くとつい「1年中涼しければいいのに」とぼやいてしまいますが、夏がくるとやはり気持ちが昂ります。

ここでひとつ提案です。海やプール、バーベキューに花火大会、音楽フェスなど、夏は心躍るイベントが目白押しの季節ですが、そのラインナップにロゼワインを加えてみてはいかがでしょうか。

昔から、季節にあわせてお酒を楽しむという習慣があります。夏の暑さを感じながらキンキンに冷えたビールをぐいっと流し込んだり、冬の寒さに背中を丸めながらほっと温まる燗酒をちびりと嗜んだり。ワインも同様に、四季折々の気候や情景、食材に合わせて楽しむことができるお酒です。中でもロゼは、夏の食卓にピッタリなワイン。今回は、夏に楽しむワインとしてロゼをオススメする理由をお伝えしつつ、とっておきの1本をご紹介します。

「夏の食卓にロゼ」のわけ

白ワインは、白ぶどうを使い白ワイン用の造り方で造られます。同様に、赤ワインは黒ぶどうを使い赤ワイン用の造り方で造られます。では、ロゼワインはどのように造られるのでしょうか。少し乱暴な説明ですが、ロゼとは「黒ぶどうを使い白ワイン用の造り方で造られるワイン」です。

赤ワインの色や渋みは黒ぶどうの皮や種に由来します。ロゼワインにも黒ぶどうを使うので、赤ワインのような色や渋みが特徴として現れます。その一方、白ワインと同じ方法(ワインにぶどうの皮や種を長い時間つけこまない方法)で造られるため、白ワインのような爽やかさも併せ持つことになります。

冷蔵庫でキリッと冷やせば白ワインのようにさっぱり飲めるし、温度が上がれば赤ワインのようにじっくり味わえる。ハイブリッドで万能なロゼワインは、どんな料理にもあわせやすいと言われます。魚介料理にも、お肉料理にも、油分の多い中華料理にも、ピリッと辛い韓国料理にも。日本の夏の食卓に並ぶバラエティ豊かな味わいにも寄り添いながら、暑さで渇いた喉を冷んやり潤してくれる、それがロゼワインなのです。

日本の絶品ロゼとの出会い

ロゼワインの産地といえばフランスのプロヴァンス地方が有名ですが、ここ日本にも素晴らしいロゼの造り手がいます。今回紹介するワイナリー、ドメーヌヒデもそのうちのひとつです。

初めて飲んだのは「ミズナラピンク」という名前の、とあるクラウドファンディングによって生まれた異色のロゼワインでした。クラウドファンディングの目的は「北海道のミズナラの木を使った純国産ワイン樽でロゼワインを造る」というもの。北海道のミズナラはウイスキーの樽としては使われているものの、日本のロゼへの使用は前例がなく、未知なるワイン造りへの挑戦だったと言います。プロジェクトには目標金額の倍にも達する支援が集まり、見事世界初の北海道産ミズナラ樽によるロゼワイン「ミズナラピンク」が誕生したのです。いただいたミズナラピンクは、樽の香り、ぶどうの果実味、スッキリとした酸味が絶妙なバランスをとっている素晴らしいロゼでした。

このワインを通じてドメーヌヒデというワイナリーを知り、特に彼らが造るロゼワインに強く惹かれて手に取ったのが「しろしろピンク」です。

ドメーヌヒデ「しろしろピンク」

「毎年『白いワインになって!』と願いを込めながら造っています」そう語るのは、ドメーヌヒデの責任者、渋谷さん。ドメーヌヒデのロゼワインに使われているのは、日本が世界に誇る国産の黒ぶどう品種マスカット・ベーリーAです。彼らの真骨頂はマスカット・ベーリーAを使った赤ワインなのですが、同じぶどうによるロゼワイン造りへの挑戦も続けています。

「マスカット・ベーリーAの果汁(原液)はとても美しい桃花色をしています。様々な条件が整った時にだけお目にかかることができる、自然の芸術です。その綺麗な桃花色に魅せられてワイン造りに足を踏み入れました。正直かなりチャレンジングなのですが、最終目標はマスカット・ベーリーAの原液の色そのもののロゼワインを造ることです。」と渋谷さん。ロゼワインの醸造過程で「白いワインになって!」と願いを込めるのも、その目標を追いかけているからなのです。

しろしろピンクのラベルには「新月日樽出し滓引き(しんげつびたるだしおりひき)」と書かれています。月の満ち欠けに合わせたワイン造りも、ドメーヌヒデの大きな特徴です。「満月の日に作業をするとワインにボリュームが出て、新月の日に作業をすると綺麗なワインに仕上がります。」そう語る渋谷さんは、もともとプロのダイバーです。海にもぐりながら月の引力による海水の満ち引きを肌で感じてきた渋谷さんは、ワイン造りにもその経験を生かしています。いわくワインも海水同様、月の引力の影響を受けるのだそう。工業化されていないブティックワイナリーだからこその、自然に寄り添ったワイン造りを追究しています。

ラベルのデザインにも注目してみてください。2017年にリニューアルしたこちらのラベルは、ナチュラルな雰囲気が印象的なモデルの香菜子さんがデザインしたもの。イラストレーターとしても活動する香菜子さんは、しろしろピンクのファンの1人でもあります。実際にワイナリーを訪れ試飲し、ワインの持つ個性をデザインに表現したのだそうです。シンプルで洗練されたデザインは食卓に並べるのにぴったり。ずっと眺めていたいような、不思議な魅力にあふれるワインラベルです。

しろしろピンクの味わい、相性のいい料理

肝心の味わいは、とっても辛口。最初に鼻腔をくすぐるのはマスカット・ベーリーAの特徴的な甘い香り(キャンディ香)ですが、よく冷やして一口含むとキレのあるすっきりとした酸味とほのかな苦味が舌の上で踊ります。香りは甘いのに味わいは辛口という面白いギャップに、心を掴まれます。食卓にしばらく置いて温度が上がってからもう一口含むと、今度は豊かな旨味が口の中に広がります。鼻に抜ける香りには木樽のニュアンスも加わり、また違った顔を見せてくれます。ロゼワインならではの楽しみ方がギュッとつまった1本です。

相性のいい料理としてぜひオススメしたいのが、冷奴です。冷えた絹ごし豆腐に鰹節と醤油を散らしただけの、シンプルな一皿。これがしろしろピンクと抜群に相性が良いのです。鰹節と醤油の香りにマスカット・ベーリーAの甘いみりんのような香りがあわさって深みが出ます。大豆の風味が消されることなく、ワインの酸味や旨味と共存しながら味わうことができます。献立に一品、冷奴を追加するだけ。それだけで、しろしろピンクをめいっぱい楽しむことができるはずです。

最後に

今回、ドメーヌヒデとオンライン会議をつないで渋谷さんに話を伺いました。カメラごしにワイナリーの中を案内していただいたのですが、しろしろピンクをはじめとするドメーヌヒデのワインたちが生まれ育つ場所にはとても穏やかで心地いい空気が流れているのを感じました。インタビュー中、ご近所の方がプラムのお裾分けにいらっしゃる場面も。ワインの醸造所とは思えないアットホームな雰囲気に、こちらの頬も思わず綻びます。

「普通はワイナリーと住居は分けるものみたいなのですが、『醸造家たるもの醸造所にすむべきだ』と勘違いして住んじゃったんです(笑)。でも常にワインの近くにいられるので、結果オーライですね。」笑顔で語る渋谷さんの目は、ワインへの大きな愛情で輝いていました。

ワイナリー紹介

今回ご紹介したワイナリーは、ドメーヌヒデ。山梨県南アルプス市にある小規模なブティックワイナリーです。ドメーヌヒデは日本の黒ぶどう、マスカット・ベーリーAにこだるワイナリーです。小さなワイナリーだからこそ出来る、ソムリエと醸造家がうらやむようなワインを造り続けます。