酒場のカリスマ・吉田類氏が名付け親となり、 酒場好き編集者が酒場をめぐる、酒場を語るときにだけ許された酒場ネーム、それが吉田マッスグ。その吉田マッスグが東京を中心とした酒場のスペシャリテを紹介。空間、大将、女将、酒、ロケーション……。酒場のスペシャリテは料理だけにあらず!
カウンターにはアクリルボードが置かれ、いまはコロナ前のように飲めなくなってしまったが、吉田マッスグが懐かしの酒場を回想していく。
市民酒蔵 諸星【神奈川県・新子安】
Vol.1だというのに、かなりの変化球から入る。場所は神奈川県横浜市東神奈川区。【市民酒蔵 諸星】は、新子安駅という用がなければたち降りることはないであろう駅のすぐそばにある。
創業は昭和初期。当時は酒屋であり、初代のときは角打ちとして営業していたという。いまも酒屋の名残として店内には酒棚が残されており、昭和の雰囲気が漂う店内の雰囲気が抜群にいい。
その雰囲気をより色濃くするのが、この店の顔でもある対面式のカウンターだ。幅50cm、長さ7mほどのカウンターが奥へと続いているのだが、ここのは一風変わっていて、カウンターを挟み、呑んべえは向き合って座り、呑むのである。もちろん、連れと呑む分にはそれでよいが、問題は独酌客。どうするか。店が混み合えば、見ず知らずの初見同士がカウンターを挟み、向き合うことになる。ただ、それがよいのである。対面したもの同士、何を話すわけでもないが、互いのペースで呑み、食べ、憩う。ときには酒が入り、意気投合、酒場談義に花を咲かせることもあるが、そうした呑んべえ同士がこの空間を共有し、店の雰囲気をつくり上げているという暗黙の意識が 【市民酒蔵 諸星】 には息づいているように思う。
<店舗情報>
市民酒蔵 諸星
神奈川県横浜市神奈川区子安通3丁目289
営業時間:16:30~21:00LO
定休日:土曜・日曜・祝日
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